漁師という生き方 会社とも家族とも違う、船の上での生活

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新人で苦労するのは、かしき(まかない料理作り担当)だね。休憩中に料理しなくちゃいけない。この船は8人乗りだから、最大8人前の料理をひとりで作る。1年もやれば段取りに慣れるけれどね。僕が漁師になった頃はずっといちばん若かったので、8年ぐらいかしきをやった。味が濃いとか薄いとか、みんな言うことがバラバラなのが腹が立つんだ(笑)。しまいには料理と一緒に醤油と砂糖を出して、「好きなだけ入れてくれ」と言ったけどね。

おかげで今では刺身、焼き魚、煮魚と魚料理ならばたいてい作れるよ。嫁さんに「たまには家でも作れ」と言われるけれど、それだけは絶対やらん(笑)。

漁船という「タテ社会」

――8年間も最年少だったんですね。

>精漁丸(44トン)の雄姿。インタビュー時は、車検ならぬ船検期間中だった

うん。僕がこの船に乗ったときは、若い人がほかにいなかったよ。50代60代ばかり。話が合わなくて息抜きができなかったね。ずっと海の上だから、黙って働いていると落ち込むんだ。

若いから友だちと遊びたいのに、生活リズムが合わない。出航したら3日ぐらいは地元に帰って来られないし、夜中に帰って来ても荷揚げがあって帰宅するのは朝7時ごろ。そこから寝て、晩には海に出る。日の出までに漁場に着いてないと仕事にならないからね。20代の頃は、「どうにか理由をつけて休もう」「この航海が終わったら辞めよう」と思い続けていたな。

仕事を頑張らなイカンという気になったのは、子どもができてから。今、小学校6年生と4年生の娘がおるよ。やっぱり地元はいいなって思う。遊んでいると嫌なことは忘れちゃうね。落ち着くし、「帰って来られたなあ」と毎回思う。どこかの港で泊まるのとはわけが違うよ。

――そんな加藤さんも今は船内ナンバー2。中間管理職としての苦労もありそうですね。

船長が自分の父親だしね。船長と若い衆のどっちにもつかずに、うまいことまとめたいと思っているよ。若い衆は自分の体のことを考えるので休憩がほしい。船長は経営を考えるので魚を捕りたい。休んでばかりだと会社が潰れちゃうからね。「ここらへんで休憩にしよう」と言う頃合いにも気を遣うよ。

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