これから、日本には「人生100年食堂」が必要だ 特別対談:リンダ・グラットン×小泉進次郎

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小泉:ひとりひとりの人生が多様化してきていますからね。これまで日本は、20歳ぐらいまでが学生時代、60歳ぐらいまでが現役時代、残りの約20年間が老後の人生というように、3ステージのひとつのレールが敷かれている国でした。

リンダ・グラットン/ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。2年に1度発表される世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランキング入りを果たしている。2013年のランキングでは、「イノベーションのジレンマ」のクレイトン・クリステンセン、「ブルー・オーシャン戦略」のチャン・キム&レネ・モボルニュ、「リバース・イノベーション」のビジャイ・ゴビンダラジャン、競争戦略論の大家マイケル・ポーターらに次いで12位にランクインした。組織のイノベーションを促進する「Hot Spots Movement」の創始者であり、85を超える企業と500人のエグゼクティブが参加する「働き方の未来コンソーシアム」を率いる(撮影:今井康一)

しかし今後は、ライフステージによって、いろいろなレールのなかから自ら選択して生きていけるような環境をつくっていかないと、ひとりひとりの希望に対応できなくなる。柔軟性のある、しなやかな、寛容な社会。そのための制度設計をしていく必要があります。国づくりの発想自体が、これまでとは違うものになるでしょう。

グラットン:イギリスでは、政治家はみんなブレグジットの話ばかりしています。100年というスパンでなく、1日のスパンで語りがちなのです。そもそも政治家にとって、長期的な問題には手をつけず、短期的な問題を語るのはとても簡単なことですしね。

私はみなさんに「70歳で引退できませんよ」と言えます。ところが、政治家が有権者に対して、その真実を語りながら選挙に当選するのは難しい。しかし、真実を知る必要はあります。見て見ぬふりをしないのは大切なことだと思います。

小泉:国民はもう気づいているんです。むしろ、将来のことを語ってくれる人を待っていると僕は思います。それがたとえ、直面して気持ちのいいことではなくても。だから日本でグラットンさんの本が売れたんです。意外なことに、僕が「人生100年時代」という言葉を使ったとき、異論を唱える人が自民党内には誰もいませんでした。

希望を示す国家から希望を叶える国家へ

小泉:先日、作家の村上龍さんが「現代に国家は希望を示すことができるのか」というテーマでコラムをお書きになっていました。ひとりひとりに希望が存在するようになり、望むものがあまりにも多様化してきて、国が示す希望に多くの人が共感するのが難しい時代になった、と。

政治家としては悲しいことだけど、僕はこのコラムに納得するところがあるんです。しかし、だとしたら政治がやらなければならないのは、多様な希望が叶うような、柔軟性のある制度設計をいろんなところに入れていくことです。ひとりひとりの希望が叶いやすい、そういった社会に生まれ育った人に「日本に生まれてよかった」と思ってもらえる、そのことが日本にとっての希望になる。そういったことを強く考えさせられました。

グラットン:私たちの仕事は、形は違えど希望をつくることだと思います。100年前に比べると、私たちは素晴らしい特別な人生を歩んでいますよね。課題は、その人生を最大に生かすということ。制度設計によって、産業革命以来の新しい将来に向けた準備をすること、それが政府の役割ではないかと思います。

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