これから、日本には「人生100年食堂」が必要だ 特別対談:リンダ・グラットン×小泉進次郎

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

小泉:いま、高等教育無償化が議論されていますが、間違ってはいけないのは、全員が無料で大学に行けるようにすればいいわけではない、ということです。

たとえば中学を卒業して丁稚奉公して一人前の寿司職人になった人がいます。最近はお酒にこだわる人が増えて、お寿司屋さんでワインを飲む人も出てきた。こういった状況の中で、自分がお客さんに選ばれるようになるには、もっと専門知識を身につけなければならないと気づく。高校に行って学び直そうとか、大学に行ってみたいとか望みを持つ。

そういった望みを叶えることが、リカレント教育や学び直しの環境整備をするということだと思います。誰もが大学に行くことがいいとは思わないんです。多様な生き方があっていい。そういうことを日本は考えていかないと。

将来、日本には、いまほど大学は必要なくなります。その時に、空いているキャンパスに、保育園、幼稚園、老人ホームをつくってもらいたい。そうすると、学食の景色が変わります。

学生たちが食事をしているところに、おじいちゃんおばあちゃんもいれば、子供たちもいる。まさに人生100年が大学のなかにあるわけです。その風景のなかで、人生100年時代を真剣に考えるようになる。これが、僕が将来、日本で見たい景色なんです。「人生100年コミュニティ」とも言えますね。

グラットン:ユニークなアイデアだと思います! 世界はいま、日本が長寿化の課題をどう乗り切るかを見ていますし、そのアイデアはすぐに手をつけることができますよね。0歳から100歳までの食堂を生涯教育の基地にしていく。そんなことが成功したら、世界が本当に魅了されてしまうのではないかと思います。ぜひなさってください。「人生100年コミュニティ」「人生100年食堂」、夢ではありません。小泉さんならできると思います。

「男だけで意思決定するのが怖い」

自著『ライフ・シフト』を持つグラットン氏と、自らの活動がまとめられた『人生100時代の国家戦略』(藤沢烈著)を持つ小泉氏(撮影:今井康一)

グラットン:日本は、特に女性の地位に関して変化がとても遅いと思います。講演を行ったとき、会場の男性たちにこう聞いたんです。「みなさん自分の家族をたったひとりで100歳になるまで養うと考えたら、どんな気持ちになりますか?」って。みなさん苦虫を噛み潰したような顔をしていましたよ。

たったひとりが家族を養うという仕組みは理にかなっていません。日本の企業は、特に女性が権利を持てるように変わらなければならないと思います。はっきり申し上げますと、世界はその点については、日本にとても悪いイメージを持っています。なぜ日本の女性は偉くならないのか? なぜシニアポジションに女性がいないのか? そんな目で見ていますよ。

これについては、政府が果たせる役割もあるのではないかと思います。女性が社会に進出できない理由のひとつは、子育て支援の部分だと思います。そして、社会における女性登用そのものの姿勢。女性が100年の人生で何のチャンスもキャリアも持つことができなかったら、とても悲しいと思います。権利を奪われているようなものですから。

小泉:僕は、「女性活躍」という言葉も本当は変えたほうがいいと思っています。「女性だから」活躍させるのではなく、「その人が価値を発揮するから」活躍してもらう。そのほうが、当の女性にとっても気持ちがいいのではないでしょうか。

僕はいま、なにかの意思決定をするときに、男性だけで意思決定をすることが怖いんです。

本当は気づかなければならない角度から、ものが見えていないのではないか、この中では全員がいいと思っていても、女性がいたら「なに言っちゃってるんですか」ということがあるんじゃないかと。

次ページグラットン・小泉が問う100年後の日本
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事