これから、日本には「人生100年食堂」が必要だ 特別対談:リンダ・グラットン×小泉進次郎
小泉:グラットンさんは『ライフ・シフト』で産業革命について言及されていますが、産業革命後の社会の変化には何十年もの時間がかかっていますよね。しかし今は、それ以上の変化と、スピードを求められている。これはものすごく大きなチャレンジです。
スピードで言えば、国よりも民間企業のほうが圧倒的に速いでしょう。国がやらなければならないのは、利益優先ではなく、超長期にわたっても必ずなさねばならないことはなにか、決して変わらない普遍的な大切なものはなんなのか、そこをしっかりと見極め、認識していくことではないかと思います。
グラットン:おっしゃる通りだと思います。しかし、民間企業だからといってスピードが速いとは限りませんよ。恐らく、一番速く変われるのは個人レベルです。その次に企業、そして政府でしょう。政府ができることは、何よりも、真実の物語を語ることです。
まず、人々に70代の半ばぐらいまで働かなければならないということを知らしめていかなければなりません。そして、そのような生き方を可能にし、促すようなコンテクストをつくっていく。将来に向かって備える準備ができて、しかるべき教育を受けられるような環境整備も必要です。
そして、企業も変わるべきです。日本は、勤続年数の長さに関しては他国に先んじていますが、65歳で退職するのでは、全然足りません。そしてもうひとつ。若い人がアントレプレナー的な能力を発揮できるようにしてあげることです。
小泉:アントレプレナーシップは大切ですね。日本はもともと自営業者がとても多い。街中には小さな企業がたくさんあります。問題は、生み出すものが、世の中に違いをもたらすものなのか。世界に必要とされるサービス、商品なのか。日本に欠けているのはこの点だと思います。
なぜ世界中がiPhoneを使うのか。なぜ世界中がGoogle、Amazon、Facebook、Twitterを使うのか。日本人が当たり前に使っているこの名前が、なぜ日本の会社じゃないんだろう、なぜ日本の生み出したサービスじゃないんだろう、と。
「マイノリティになる経験をせよ」
グラットン:問題は、才能のある若い人たちが、なにをやりたがっていて、どこへ行きたがっているのか、ですね。
小泉:そこです。大企業です。
グラットン:そう、若い人たちは大企業が好きなんですよね。能力の高い人こそ、そうではなく、起業を目指せるようにしてあげたいところです。
日本の若者は、かなり内向き志向ですよね。あまり旅行にも行かない。海外に行かないし、英語がなかなか話せないというのも非常に大きな問題だと思います。政治家の方も英語を話されない方が多いですよね。そうなると、なかなか世界が見えてこないと思います。
たとえばインドを見てください。インフォシス、ウィプロなどいろいろな会社が生まれています。いずれもインドの人々が学生のうちにシリコンバレーに行って、ビジネスのつくり方を学んで、現地で得たネットワークをお土産に母国に戻ってきたわけです。
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