フットサル「Fリーグ」の何とも厳しい現実 人気スポーツだが集客は危機的状況だ

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「Fリーグ」は、今年10年目の節目を迎えた、日本国内最高峰のフットサルリーグだ。全国にある12のチームが、ホーム&アウェー方式による総当たりのリーグ戦を年33節198試合を行い、順位を争っている。

地域リーグしかなかったフットサル界に、全国リーグを設立しようという機運が高まったのは、日韓ワールドカップの興奮冷めやらぬ2003年のことだった。ブラジル・サンパウロ州サンベルナルド市の記念イベントとして、ブラジル代表による親善試合が組まれ、その対戦相手として、フットサル日本代表が招待されたのだ。ブラジル遠征に帯同した現在のサッカー協会名誉会長の大仁邦彌氏は、約7000人の大観衆がアリーナで熱狂する姿に、フットサルの可能性を見出した。

帰国後すぐに、大仁氏は、当時日本サッカー協会会長だった川淵三郎氏に、フットサル日本代表チームの強化を進言し、海外から日本代表監督を招聘した。さらに、日本代表を強化するとなれば、当然その基盤となる全国リーグが必要となる。こうして、全国リーグ設立の機運が高まっていき、いよいよ2007年、フットサル初の全国リーグとして、「Fリーグ」が創設されたのだった。

当時大学生だった滝田学(フットサル日本代表・ペスカドーラ町田所属)は、Fリーグ設立を知った時の心境をこう振り返る。

「フットサルにはワールドカップがあるっていうことは知っていたし、何より、こんなに面白いスポーツなのにプロリーグができないのはおかしいだろうって思っていました。だから、Fリーグができるって知った時は、“絶対フットサル選手になって全国リーグでプレーしてやる”って決意したのを覚えています」

このように、Fリーグ設立をきっかけに、フットサルの魅力に取り憑かれた若者たちは、そのポテンシャルを信じて、こぞってフットサル界に入っていった。

ペスカドーラ町田でプレーする滝田学選手。2017年10月の府中アスレティックFC戦で(筆者撮影)(提供:KING GEAR編集部)

創設以降、低空飛行が続くFリーグ

 Fリーグを観戦するには、各チームやリーグのサイト、もしくは大手プレイガイドでチケットを購入する必要がある。フットサルを観たいファンが、おカネを払って観戦するという意味では、Fリーグは、プロリーグであるサッカーなどと遜色ない。

ただ、プロとして契約をしている選手は、驚くほど少ない。フットサル日本代表クラスの選手ですら、アマチュア選手であることも決して珍しくはない。

Fリーグは、将来的には完全プロ化を目指すと謳(うた)っているが、現在のところ、完全なプロチームは名古屋オーシャンズただ1チームのみであり、その状態は10年間変わっていない。

肝心の観客動員数は、リーグ創設以降、低空飛行が続いている。Fリーグの総入場者数は年間20万人前後、全国にたくさんいるはずのフットサルプレーヤーをアリーナに呼び込むことができていない状況だ。

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