開催前から話題に事欠かなかった北京オリンピックが閉幕しました。日本女子ソフトボールの金メダル、水泳の北島康介選手の2大会2種目連覇と、メダル数こそアテネを下回りましたが、多くの感動と記録を残した大会でもありました。
そんななかで、ハッと感じるものがありました。それは勝つ選手は試合中、“野性化"しているということ。レスリングなどはその最たるもので、まさに動物同士の戦い。猫のごとく身をかわし、隙あらば肉食動物のごとく襲いかかる。動物の本能のぶつかり合いという印象が強く残りました。「康介は大きな試合になると、野獣になる」と平井伯昌(のりまさ)コーチがテレビでコメントしているのを聞き、「やっぱりそうだ!」と確信。
それに対して理性や知性が優先している場合、その弱点でもある「先を読み過ぎ、力を制御する」「失敗(負け)を考える」などの思考が少しでも入ると、一流のアスリートといえでも、ここ一番で実力、実力以上が発揮されないのではと感じました。当然そこに至るまでの過程で、知性を取り入れた練習が必要なのは言うまでもありません。
私がここで言う“野性"とは、俗に言うハングリー精神とはちょっと違う。そもそもハングリー精神の意味自体が物的欲求を満たす今の日本では死語になりつつあるように思えます。この“野性"を言い換えれば“野心"、心の奥底にある欲求を満たすためのハングリーさと私は考えます。
以前、私がプロテストに受からないとき、先輩に「どうしたらテストに受かりますか?」と聞くと、「本当に受かりたいと思うやつから受かるんだよ」と真顔で答えてくれたのを思い出します。現に北島選手は開幕前に「ここに来ている誰よりも勝ちたいと思っている」とコメントしています。
皆さんへ何を伝えたいかというと、今のゴルファーは情報過多により頭でっかち、すなわち理性や知性に偏りすぎた練習やプレーをしていませんか? ということ。もっとフィーリングや感性、直感といった“ゴルファーの野性"を目覚めさせることに目を向けるべきではないかと思うのです。
ジュニアゴルファーはパットの際にあまりショートしません。むしろオーバーするケースが目につきます。それは「カップに入れたい」という欲望が前面に出ているからです。しかし大人になると3パットを恐れるあまりにショートするケースが多くなり、結果的にショートする人のほうが3パットの確率は高くなります。
アマチュアの方をレッスンするときに、上手くなる方の共通点がいくつかあります。その一つに結果を考えずに“まずやってみる"。これ、意外にできそうでできないんですよ。
「ここは手首を使って打ってみましょう! 」。するとAさんは「わかりました、やってみます」。一方Bさんは「でも手首を使うとトップしちゃうから……」。あなたはどちらのタイプですか?
1965年千葉県生まれ。プロゴルファー&フィジカルトレーナー。けんこう寺子屋ゴルフスクール主宰。選手時代のケガの経験からプロトレーナーに。中嶋常幸プロの復活に貢献、高い評価を受ける。一方、若手育成やアマチュアのレッスンにも力を注いでいる。
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