韓国サムスン、「3本の矢体制」へ布石? グループ内で事業再編、71歳李会長から子供へ権力移譲も

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サムスン電子は李会長の長男で、実質的後継者とされる李在鎔(イ・ジェヨン)氏が副会長

韓国の代表企業サムスングループが、創業2代目である李健煕会長(71)のワンマン体制から、「ポスト李会長」をにらんだ後継体制固めに向け、動き出した。

サムスン電子と並ぶ同グループの中核企業である第一毛織が、同社のファッション部門をグループ内のレジャー関連企業・サムスンエバーランドに売却することを発表した。今回の決定で、サムスングループの今後の後継体制が少し明らかになりそうだ。

サムスングループと言えば、日本人にはスマートフォン「ギャラクシー」シリーズのメーカーであるサムスン電子がまず思い浮かぶが、第一毛織は1954年に設立されサムスン電子より歴史は古く、同グループの母体企業だ。現在サムスン電子会長で創業者2代目の李健煕会長の二女、李叙顕(イ・ソヒョン)氏が副社長を務めている会社でもある。

母胎企業のファッション部門を売却

現在、サムスン電子は李会長の長男で、実質的な後継者とされている李在鎔(イ・ジェヨン)氏が副会長に、長女の李富眞(イ・プジン)氏がホテル新羅社長を務めている。現在のサムスングループは李健煕会長の1人体制だ。今回の決定が「以前から噂されていたように、3人の子どもたちがそれぞれ役割分担をしてグループ全体を動かす体制に近づくのでは」と韓国の財界関係者は指摘する。

第一毛織は12月1日に同社ファッション部門を1兆0500億ウォン(約1000億円)で売却する。同社は1970年代にファッション分野に進出、長い間韓国のファッション業界をリードしてきた。とはいえ、90年代にケミカル分野、2000年代に入ってからは電子部品分野にも進出し、社名と違い、毛織・ファッション企業というよりは素材・部品メーカーとしての性格が強くなっていた。

一方、サムスン電子をはじめグループ主力の電子・電気分野は李在鎔氏、ホテルなどレジャー分野は李富眞氏、ファッション・広告分野は李叙顕氏と、各人の得意分野を兼ねた事業分担がすでにできあがっている。また、第一毛織からファッション部門を引き継ぐサムスンエバーランドは、同グループにおいて一族支配の中枢となる企業で、李在鎔氏はサムスンエバーランドの株式の約4分の1を所有している。

そんな現状から考えると、李健煕会長が今後の後継体制を固めるため、子どもたちの現在の担当分野を中核にしてグループの再構築を図ったもの、という指摘も納得がいく。

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