意外と知らない、トヨタの「カイゼン」の本質 コミュニケーションでも生産性は上げられる
従業員のアイデアを活用する効果は、当面のオペレーション進化にとどまりません。通常の作業をひたすらミスなく繰り返すことを求められる現場では、従業員のモチベーションは低下しがちです。ミスの分だけ減点するのではなく、質の良いアイデアの分だけ加点するスタイルに加えて、自らのアイデアが会社に貢献しているという満足感から、メンバーのモチベーションが大きく向上するのです。
これは、1分前後の作業サイクルをひたすら繰り返すトヨタの工場といった現場でも言えることです。トヨタには、現場の作業者のアイデアを具現化する社内制度「創意くふう提案」があります。これは、従業員のモチベーションを向上させる貴重な機会だったとトレーナーたちは口をそろえます。
モチベーションが向上した従業員はさらに多くのアイデアを出してくれるので、現場はどんどん成長していきます。多くの現場では従業員のアイデアを引き出すためのしかけが往々にして不足しており、その意味で大きな成長余地があると言えます。
組織全体の進化を後押し
次は、職場間で行われる横のコミュニケーションです。改善活動の初期は1つの部署などの小さい範囲で完結できるテーマが大半ですが、活動が進んでテーマが壮大になるほど多くの人・部署の協力が必要になります。そのため、改善活動が進むにつれ、部署間の連携が進んできます。
また、部署間で切磋琢磨する風土も醸成されるので、ほかの職場での好事例を自身の職場に取り入れようという動きが生まれます。このような動きを「横展開」と言いますが、この動きは、個別の職場での効果を全体に波及させる意味で組織全体の進化を後押しします。また、基になるアイデアがあるので、ゼロベースで考えるよりもスピーディに職場が成長することにつながります。
このように改善活動は、目指すレベルをどんどん進化させ、縦・横の密なコミュニケーションを通じて全体が一体となって成長する組織をつくりあげます。ここまで来れば、会社の方針と各職場でのさまざまな取り組みが連動し、現場での人材育成もどんどん進むようになります。そして、「こんな人材がいたのか」というスターが現場から継続的に排出され、人が交代しても時間が経っても常に組織が進化している状態になります。これらの効果は、改善活動を愚直に続けた組織だけが、得ることができる「果実」なのです。
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