同名誉教授は、刑法に絡む米国憲法という専門分野における全米的な権威であり、今回のミュラー特別検察官の捜査について、「トランプ大統領に司法妨害の罪をきせることは、米国憲法下では不可能だ」と指摘し、「憲法上の大統領に与えられた権限によって、トランプ大統領はコミー前FBI長官を解任できるし、司法省に対して、誰を訴追し、誰を訴追するな、と命じることができる」と述べている。
これらの憲法上の権限は、過去の大統領によっても行使されている。その具体例として、同名誉教授は、「トーマス・ジェファソン、リンカーン、ルーズヴェルト」、さらに、パパ・ブッシュとして知られる「ジョージ・ブッシュ」などの大統領名をテレビ・インタビューで挙げている。
ミュラー特別検察官は、米国憲法の大統領権限の行使への具体的な運用の意味や、刑法との法的な関連性を十分に知らずに、トランプ大統領を狙い撃ちしようとしていたとすれば、同名誉教授による法解釈がメディアで広く報じられ、その内容を知って愕然としたに違いない。
実は、米国の法律家の間には、同名誉教授のような、法に対する深い洞察には、到底かなわない「法律リサーチに知識不足」の実務家たちが、実務に追われながら、何とか生き抜いてきたという現実がある。ミュラー氏はそうした実務家の1人であって、それ以上でも、それ以下でもない。
ミュラー特別検察官には、さらに頭が痛い事案がある。ミュラー氏のお気に入りのFBI捜査官が、特別検察官チームの1人として、トランプ大統領のロシア疑惑を担当していたが、彼は同じチームのもう1人と「反トランプ・親ヒラリー」のEメールを、短い期間に、何と1万通も交信していたことが明らかになり、2人とも更迭された。
ミュラー特別検察官の「反社会性」が問われる
FBI組織内には、米連邦法に基づく「インスペクター・ジェネラル」と呼ばれる内部監察官がいる。現在、彼らは厳正な査察に従事している。米議会では、インスペクター・ジェネラルの書類が完成したら、FBIから転送してもらう手はずを整えている。FBIの名誉挽回には、インスペクター・ジェネラルの厳正な捜査が不可欠だ。
ミュラー氏を特別検察官に指名したのは、ロッド・ローゼンシュタイン司法副長官だった。同副長官は、司法省内でミュラー派閥に属するとされるが、それはともかく、ジェフ・セッションズ司法長官もローゼンシュタイン司法副長官も、2016年夏に問題となった、ヒラリー民主党最終大統領候補のEメール問題では、コミー氏のFBI長官としての不手際を、文書上、明記している。その不手際が理由でコミー氏は、トランプ大統領によって解任されたわけである。
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