「ファイナンスとマーケティングからお声掛けいただいたのですが、私は内勤で育児との両立がしやすそうなこと、ノバルティスのファイナンスは強いと評判だったことから、ファイナンスを選んだのです」
こうして、ニュートリションという病院向けの流動食を作る事業部の経営企画統括部長に昇進。篠田さんの期待どおり、ノバルティスのファイナンス部門はシステムも人材も水準が高く、「ここで仕事を学んだことはラッキーだった」と述懐する。
一般的に、外資系の「日本支社」は、本社から降りてきた戦略にがんじがらめで、自分のやりたいことが思うようにできない側面がある。だが、ノバルティスは違った。支社の人材にも権限を移譲する会社で、直接、スイスにある本社のトップとやり取りし、仕事を推進することができた。このことも、篠田さんのモチベーションをぐっと押し上げた。
「スイスの本社に来ないかというオファーまでいただいて、ものすごく、心が揺り動かされました。でも、日本の証券会社勤めの夫の仕事は専門性が日本国内で発揮される仕事だから、一緒に海外に転勤してと頼むことはできません。かといって、私ひとりが子どもを連れて海外赴任するのも、子煩悩な夫から子どもを引き離すようで、よくない。だから辞退するしか、ありませんでしたね」
上司がワーママ…言い訳はきかない!
篠田さんが38歳のとき、またしても大きな転機がやってきた。勤めていた部署が、世界最大の食品会社「ネスレ」に買収されたのだ。
「ちょうどそのとき、第2子を妊娠していたんです。『ちょっと、待ってー』と思いましたね」
そうはいっても、そのままネスレに移籍するより選択肢はなかった。
事業部の合併とは、システムから報告系統、仕事のやり方から、何から何まで変わるということだ。しかも篠田さんは、その部門の経営企画の長だから、移行を取り仕切る立場だ。
「そんな大切な時期に、私が産休・育休に入ってしまったら迷惑がかかると、申し訳ない気持ちでしたが、新しいフランス人の女性上司が『妊娠・出産にベストなタイミングなんてないから』と言ってくれて、救われましたね」
第2子出産後は、また4カ月で早々に育児休暇を切り上げ、復帰。上司のひとりは、先のフランス人女性上司だったから、仕事はやりやすかったのでは?と思うが、「上司もワーキングマザーだからこその苦労」もあったと言う。
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