人工知能が「売り上げ成長」の武器になるワケ 市場平均を超える成長のために必要なこと

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たとえば6300万人の顧客をもつ無線通信企業のTモバイルUSは、競合他社に対抗するために最前線で顧客と関わるコールセンターに注目した。売り上げと契約維持率の両方を高め、顧客満足度を改善し、人件費を抑えるために、彼らがまず注目したのはコールセンターの最適化企業であるアイフィニティだった。

アイティニフィでは発信者のIDを使ってフェイスブックやLinkedInなどソーシャルメディアなどをスキャンし、似たようなユーザーの行動を把握するというユニークな人工知能技術を持っていた。また、膨大な通話履歴をスキャンし、コールセンターでオペレーターの行動パターンを解析する機能も備えられ、顧客を最も相性がよいと思われるオペレーターにつなぐことも可能になった。

アイフィニティのように顧客の行動をもとに発信者とオペレーターをマッチングするシステムはユニークではあるが、営業オートメーションの世界では異端というわけではない。データ主導によって売り上げと収益の獲得を最適化および自動化する技術はここ1年間で台頭してきており、アイフィニティのシステムもこの流れのなかに位置づけることができる。

こうした技術を使えば、データベースやソーシャルメディア等の解析可能なデータをスキャンし、受注確度を予測したり、最適な商品を特定したり、マーケティング効率の知見を深めたりする手がかりが手に入る。営業アプリケーション市場は2010年から2015年にかけて7%拡大しているが、この傾向は2019年まで続くが、その頃には93億ドルもの市場規模に達すると予想されている。

他社に先駆けて営業に人工知能を活用している企業では、見込み客やアポイントメントの件数が5割以上増えたり、コストが4~6割も削減されたり、また電話営業の時間が6~7割短縮されたりといった実績も出ている。顧客ニーズが早く満たされることで顧客満足度もあがる。

しかも、人工知能には忘れることがないので、メール等を通じて数週間から数カ月も見込み客を温存しておくことも可能になる。

営業マネジメントの再編をせざるを得ない状況に

では将来的に営業マンは必要なくなってしまうのだろうか。

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マッキンゼーのコンサルタントたちは、いずれ絶滅するという予測は行き過ぎかもしれないと述べている。しかし、企業は自動購買のAIシステムやリバースオークションを積極的に用いるようになってきている。もはや書類かばんをさげた営業マンが前時代的であることに議論の余地はなく、営業マネジメントの再編をせざるを得ない状況になってきている。もちろん人間の知恵が必要な案件については、人間との会話をすることになるが、それでも勢いはとまらない。

今後、営業マンにとって最も課題となるのは、次々と現れるテクノロジーについていくことになるはずだ。これは突きつめれば、どの技術を取り入れればよいかを理解するとともに、こういったITプラットフォームを迅速に営業プロセスに組み込むために組織の学習と適応能力の両面における柔軟性を持つということを意味する。今後営業向け技術の開発競争を勝ち抜くには、テクノロジーを使いこなす新たな人材を育てることも重要になるだろう。

熊沢 里美 ライター

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くまざわ さとみ / Satomi Kumazawa

1987年福岡県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。大学院時代からインタビューを中心に雑誌や書籍のライターとして執筆活動を始める。他にエッセイも手がけ、著書に評論エッセイ『だれも知らないムーミン谷 孤児たちの避難所』(朝日出版社)がある。

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