たとえば、親と子どもの利害が実は対立しているのに、親がそれに気づかず、自分に都合のいい解釈をしていることもたびたびあります。
あるいは、大人が「子どもにかわいそう」と思っていることを、当の子どもは「かわいそう」とは思っておらず、逆に、大人が「子どもにいいだろう」と思ってしていることを、子どもはむしろ迷惑に感じていたりすることもよくあります。
離婚家庭の子どもだけではありません。再婚家庭や、同性カップルで子育てをするおうち、里親・養親家庭など、いわゆる「定形ではない家族」を取材するなかでも、同じようなことが多々あると気づきました。
世の中では、いわゆる「ふつうの家族」――お父さん、お母さんと、血縁の子ども――ばかりが「正しい形」とされ、それ以外の家族の子どもは「かわいそう」とみなされがちですが、どうもそういうことではない。
周囲がそれを「かわいそう」と決めつけるから「かわいそう」なのであって、そういう見方をやめるだけで「かわいそう」ではなくなるところが大きいのです。その一方で子どもたちは、大人が気づきもしない、まったく別のところで、悩んでいたりします。
いわゆる「ふつうの家族」だって同じです。家族の形が「ふつう」なら子どもが幸せかというと、そうとも限りません。むしろ親が「ふつう」にしがみつくせいで苦しめられている子どもも、少なくないのです。
この連載では、さまざまな経験をした子どもの立場の人たちに話を聞き、子どもに本当に必要なことは何なのか、考えてみたいと思います。
大人からすると「えっ、そこなの?」と思うような子どもたちの悩みや喜びに、どうぞご一緒に、耳を傾けてもらえたら幸いです。
大好きだった父親の交際相手は…
最初に話を聞かせてもらったのは、椛島晴子さん(仮名・55歳)。とある省庁にお勤めのシングルマザーで、30歳になるダウン症の息子さんと、都内で暮らしています。
晴子さん自身、子ども時代に親の離婚を経験しています。
「父親に交際相手がいることに気づいたのが、中学、高校くらいのときでした。それが原因で両親が不仲になり、私が高校のときに離婚しました。その頃が一番、悩みが深かったですね。
離婚って、子どものストレスはすごく大きいと思うんですよ。子どもってほら、親に対して愛情深いから、『お父さん、お母さんが悩んでいるみたいだから、何かしてあげられることはないかな』とつい思いがちじゃないですか。でも、大人が抱えているものはすごく大きくて、受け止められない。子どもの葛藤は大きくなりますよね」
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