(第15回)対策本じゃ身に付かない、「考える力」の鍛え方

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 せっかくなので、僕からも一つ、答えを出すのが難しい問題を出したい。

 その問題は「自民党総裁選、誰の主張が正しいか」だ。
この問題に答えるためには、「正しい主張とは何か」を考えるところからはじめなければならない。
「誰が総裁になっても同じ」
「まぁ、なんとなくだけど○○さんがいいんじゃない」
大半の人にとってはそれが本音かもしれないが、そこで思考をストップさせてはもったいない。
 こういったニュースで頻繁に流れている題材を取り上げ、「問題の本質を捉え、自分なりの意見を持つトレーニングの場」とするのが正しい活用の方法だ。

 今回の候補者が主張している意見はそれぞれのポジショニングが(ある程度)はっきりしていて、ビジネスのケーススタディとして非常に面白い。経済政策に関していうと、大きく分けて、「増税派−上げ潮派」という軸と、「財政支出派−財政規律派」の2軸でポジショニングマップが描ける。
 まず、「増税派-上げ潮派」という軸で見ていくと、現在の候補者は、与謝野氏が唯一増税派で、他の4人の候補者は皆、上げ潮派だ。(ちなみに民主党は増税派、民主党の小沢代表は上げ潮派で党の意見と代表の意見が異なる点が面白い。)
 一方、財政支出−財政規律という軸でいうと、無駄な出費をやめましょう、という財政規律に関してはわかりやすいし、言うまでもないと思うが、麻生氏、民主党の小沢代表、及び民主党は、財政支出派だ。財政支出を増やし、景気を浮揚しましょう、という経済学ではクラシカルな考え方だ。これはある程度の効果はあるが、景気の先行きに不安があり、貯蓄性向が高まっている時には限定的になるという問題もある。
(石破氏の経済政策に対しての意見は本稿執筆時点でまだ聞かれない。不得意な分野では勝負せず、得意分野でだけ勝負するというニッチ戦略なのかもしれない。)

 総裁選各候補者の主張のほんの概要だけを述べた。この先は是非自分自身の頭で考えてみて欲しい。一見自分には関係がないような事柄であっても、客観的なデータを元に、自分なりに考えてみるということは、社会に出てから役に立つし、何より面白い。

 せっかくだから、考えるのをやめずに身近な問題の構造に踏み込んで考えてみてはどうだろう。
 きっと、生きていくのが楽しくなるはずだ。

福井信英(ふくい・のぶひで)
慶應義塾大学在籍中にジョブウェブと出会い、インターンシップ生として働き始める。
大学卒業と同時に(株)日本エル・シー・エーに就職。経営コンサルタントとして、学校法人のコンサルティングに取り組んだことをきっかけに、2003年3月に(株)ジョブウェブに転職。
現在、新卒事業部の事業部長として、企業の採用活動のコンサルティングや学生を対象とした各種リサーチ、教育研修コンテンツの作成に取り組む。
1977年生まれ。富山県出身。
福井 信英

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