IS後も「人権侵害」が横行するイラクの実態 IS構成員だったというだけで処刑対象に
国際連合は、イラク裁判所の訴追を支援するため、IS犯罪の証拠を収集する特別調査チームを設置している。しかし、国際社会は、イラク兵士の手で依然大規模に行われている復讐を見過ごすことを選択した。何千人ものIS関係の女性や子どもを、とりあえず作ったキャンプや刑務所で恣意的に拘留しながら、IS容疑者をひどく拷問し、殴打し、処刑しているのである。
戦争の熱狂下におけるこうした自警主義は収まるだろうが、少なくとも1万人はいるIS容疑者の裁判、投獄、判決、執行は数年にわたって続き、さらに多くのイラク人の家族、部族、地域社会に新たな悲しみをもたらし続けることになる。
違法行為が横行している
人権保護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によると、現在イラクが行っていることは、過去何十年間にわたってイラクの司法制度が汚されたのと同じような違反行為にまみれている。これは、たとえば以下のような行為だ。
・自白を強要する厳しい拷問
・囚人による弁護士や家族への面会不可、愛する人が生きているかどうかわからないことも多い
・簡易法廷、中にはわずか15分しか開廷せず、すぐに死刑判決を下した例も
悲しいことに、これらの裁判には、イラクに対するISの犯罪について、司法的、あるいは歴史的説明をしたり、犠牲者に対する真の正義を立証するという利点すらない。容疑者の多くの告発理由は「ISの構成員」であるということだけだ。これはたった一言で簡単に立証されてしまうものであり、国際法の下での虐殺や、イラク刑法下のレイプ、殺人などの犯罪記録をすべて提出する必要もない。
裁判は、工場ラインの「先入れ先出し」のごとく行われており、蛮行の責任を最も負うべき人々の訴追を優先させる戦略はない。あるイラク人の上級判事は、「イスラム国の料理人はイスラム国戦士と同じく有罪だ」と主張している。