半世紀ぶり国産旅客機MRJ--三菱重工、航空機自立への最終切符

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「次」もボーイング頼み? トヨタ出資の意味

時間がかかったのは、キスされたのがMRJだけではないからだ。ボーイングは、MRJのライバル、ロシアのスーパージェット100のコンサルを引き受けている。当然ながら、ボーイングにはロシア市場への思惑がある。

両天秤をかけるボーイングの真意は、外部からは測りがたい。ところが、三菱重工は「MRJの次」の戦略も、ボーイング頼みである。

三菱重工が期待する「次」は、ベストセラー機、737の後継機だ。「ボーイングは737の後継機を100席クラスから考えている」と戸田社長は見る。「MRJの機体を大きくして100席ぎりぎりまで行くのか、(737の後継機の)プラットフォームに融合させるのか。100席を超えた領域も、ボーイングとの大きな連携の中でやりたい」。

もう一歩踏み込んで大宮社長が言う。「私の希望としては、737の後継機を丸ごと、と言うより、最終組み立てラインもやれたらいい。やれると思う。ボーイングはウンともスンとも言っていないが」。

エアバスは天津でA320の組み立て工場を立ち上げた。767以来の“濃厚な関係”からすれば、大宮社長の希望がかなうシナリオも、絶無ではないだろう。だが、そこまでボーイングに頼り切って大丈夫か。

かつて、ボーイングはA380の開発を阻止すべく、エアバスに共同開発を持ちかけ、ドイツをエアバスから引き抜こうとした。80年代、日本も中型機「7J7」の共同開発をドタキャンされた経験がある。

今回は、“裏切られた”ときの備えもないではない。三菱商事と同率2位、三菱航空機に10%出資したトヨタである。トヨタは運航会社・朝日航洋を傘下に持ち、機体メーカーの富士重工業にも出資している。

三菱航空機の戸田社長が言う。「今まで以上にトヨタ生産方式に学びたい。われわれの複合素材、軽量化技術もトヨタの将来の自動車、さらにその“次”にお使いいただけるチャンスがある。次は空飛ぶ自動車ですか、と言っている」。

あるいは遠くない将来、日本の空でアッと驚く融合が起こる可能性も、ないではない。


(週刊東洋経済)

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