半世紀ぶり国産旅客機MRJ--三菱重工、航空機自立への最終切符

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“戦闘機のエース”登板 「プロペラ機より安く」!?

今年4月1日、MRJ事業の推進母体として設立された三菱航空機。本社は名航の「時計台事務館」に置いた。往年の技術者たちが零戦の設計に没頭したゆかりのビルである。

今、宮川淳一・三菱航空機常務の指揮の下、400人がMRJの設計に取り組んでいる。作業は「基本計画図」が完成し、「詳細計画図」に入った。いわゆる基本設計が終わり、主要構造部材・装備品が決定、艤装の“成立性”も確認された。宮川常務が言う。「ローンチで目の色が変わった。ローンチがかかるまでは、本当にやるのか、本当にお客がつくのか、みんな不安。オオカミ少年みたいなことがいっぱいありましたから」。

宮川常務がMRJのプロジェクトマネージャーを拝命したのは昨年4月。それまでは、防衛省のステルス実証機の主任設計者だった。“戦闘機のエース”を投入したところに三菱重工の決意があるが、本人は拝命して3カ月、「真っ暗」だった。

発足当時のスタッフはたった30人。まず、どうやってATO(正式客先提案)にこぎ着けるか。「ATOとは、お客様に、この性能をこの価格でこの時期にお届けすると約束すること。お客様の声を聞き、構造設計をやり、すべてを決めなければならない。営業のイロハのイも知らない。本当、どうやったらいいの」。

買うほうは身構えていた。「今どき、ナショナルプロジェクトだから、と言われても--」。霞が関方面から圧力がかかってくるのは、目に見えている。当初、エアラインがMRJに要求した性能は、プロペラ機のQ400(70席)の1人当たりコストを下回ること、定時就航率が99・7%を上回ること。「買いたくない」を言い換えた要求である。

三菱航空機に出資した商社も買ってくれない。出資商社はいずれも航空機リース事業を手掛けているが、「リース機として買うのは、実績があり、流動性を持つ機体。実ユーザーがつくかどうかが大事」。

元来、業界では「MRJの国内需要は100機がいいところ」と見られていた。その100機もままならない。となれば、あらためて海外市場である。宮川常務は1泊3日の海外出張を繰り返した。うっすら見えてきたのは「この業界は狭い。少数のキーマンがいて、業界全体がそのキーマンを見ている」ということ。キーマンに「使える」と評価してもらえれば、そして、そのための不断の努力が認められれば、それが突破口になる、という手応えである。

MRJはどんどん変化している。1年経つか経たないかで、座席が大きく変わった。もともと3次元ネットという特殊な織り方で足元空間を広くする「スリムシート」がMRJのウリの一つ。ファンボローで展示したモックアップ(実物大模型)では、胴体をやや扁平にすることによって、シート・セパレーション(座席の中心線から中心線までの距離)を787と同じ幅にまで広げた。

さらに、窓側の座席のひじ掛けを取り払い、代わりに、窓側の胴体にくぼみをつけた。胴体をやや扁平にすれば、当然、空気抵抗が増えるが、それだけの犠牲を払っても、まず、乗客の「ゆったり」感なのである。

一方、アルミにするか、それとも主翼同様、複合材にするか、さんざんもめた胴体は、アルミを選択した。胴体は窓やドアなど開口部が多く、複合材を使えば、補強材で補強しなければならない。機体の小さいMRJでは補強材の重量が燃費に響く。ここは経済合理性を優先した。

MRJの正面の2人の敵、エンブラエルのERJは機体が大きく、「737と見紛うゆったり感」(商社幹部)があるが、運航効率は劣る。ボンバルディアはその反対。機体が狭く、窮屈だが、運航効率はいい。MRJが狙うのは、両社のいいとこ取りである。

最も悩ましかったのは、ジェットエンジンの選択だ。航空機価格のうち3分の1がジェットエンジンの値段であり、航空機の性能の半分はエンジンで決まる。MRJには、世界の3大ジェットエンジン・メーカー、米GE、英ロールスロイス、米プラット&ホイットニー(P&W)から新エンジンの提案があった。

現在、RJ向けエンジンはGEの「CF34」が独占している。GEの提案は、そのCF34の改良型。ロールスは大型エンジンのコア技術を活用した最新小型エンジン、P&Wは従来の設計概念を一変させる「GTF」(ギアド・ターボファン)を提案した。「最初、(三菱重工の選択は)ロールス、GE、P&Wの順番だった。それが、引っくり返った、と聞いている」(同業他社)。

P&Wが自ら「ゲーム・チェンジャー」と呼ぶ新エンジン、GTFは、エンジンのファンとタービンの間に変速ギアを挿入し、それぞれを最適の回転数にすることによって、燃費を1~2割、メンテナンス費用を4割改善する。

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