哺乳びんやおもちゃの殺菌は過敏な反応だ 泥だらけで遊ばせるのは悪いことではない

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現在、アメリカ小児科学会(AAP)は、子どもが何歳であろうと、哺乳びんを殺菌することをすすめてはいません。同学会が推奨しているのは、哺乳びんを最初に使う場合、あるいは自宅で使っている水が飲料水として安全ではないとみなされる場合には、沸騰したお湯の中で殺菌洗浄するか(ストーブトップ法)、食器洗浄機の熱湯モードで洗うということだけです。

自宅の水が飲用に適しているのなら、哺乳びんや乳首を洗うのにも十分安全です。赤ちゃんに離乳食をあげるのに使うスプーンやフォーク、皿、そしておしゃぶりや歯固めも同じで、どれも水と洗剤で洗えば十分でしょう。ただし、ミルクの残りが哺乳びんや、付属品の隅やすき間に付いているとそこで細菌が繁殖するので、その部分はしっかり洗うようにしてください。哺乳びん用ブラシを使うとよいでしょう。

哺乳びんや食器類の消毒はそれほど几帳面にやらなくても大丈夫だと思えるようになる研究結果もあります。スウェーデンのヨーテボリ大学の科学者チームが1000人以上の子どもを対象とした調査データを分析したところ、お皿を食器洗浄機ではなく手洗いしている家の子どもは、就学年齢に達するまでにアトピー性皮膚炎を発症するケースが少ないことがわかりました。

この研究では、家にペットがいることや、母乳保育をしたことなど、ぜんそくやアトピー性皮膚炎のリスクを低くするほかの要因の影響を取り除いているので、結果の信頼性は高いといえます。この研究が示しているのは、あまり効率のよくない皿洗い方法を採用したほうが、幼いうちに微生物に接する機会が多くなるということです。

アレルギーやぜんそくから子どもを守るためには?

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微生物に接する機会が多ければ、アレルギーやぜんそくから子どもを守れることがわかっています。食器洗浄機なんていらないというわけではありませんが、時には食器を手で洗ってみるのもいいでしょう(食器洗浄機のありがたみもよくわかります)。

「赤ちゃんや子どものおもちゃはどのくらいの頻度で洗うべきですか? そのときには何で洗えばいいですか?」と聞かれることもあります。

これはよく聞かれる質問です。そして「毎日、または毎回使った後に洗うべきですか?」とか、「ふつうの消毒剤、それとも漂白剤?」などと、具体的に聞いてくる人が多いのです。まず、おもちゃは目に見えて汚くなるまで洗う必要はありません。ただ、病気の子どもがそれで遊んだときには洗ったほうがいいでしょう。

なにで洗うかということですが、水と洗剤で十分すぎるくらいです。消毒剤や漂白剤に入っているような化学薬品は強すぎるので、おもちゃをきれいにするときや、子どもが遊ぶ床などをきれいにするのには必要ありません。この質問は筆者らにとっては、赤ちゃんは汚れ一つない環境で遊び、育つ必要があるとする考え方が、いかに広まっているかを実感させられる質問の1つです。

ブレット・フィンレー ブリティッシュ・コロンビア大学教授

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B. Brett Finlay, PhD

バクテリア感染に関する世界的権威。微生物研究歴は30年、450本の論文を発表する一方で、バイオテクノロジーベンチャーのInimex、Vedanta、Microbiome Insights の創業者でもある。カナダの民間人が受けることのできる最高位の勲章、Order of Canada の受勲者。

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マリー=クレール・アリエッタ カルガリー大学准教授

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Marie-Claire Arrieta, PhD

腸内細菌と免疫についての研究者。最近の乳児のぜんそくと重要腸内細菌群欠如についての研究は、2015年にこの分野のブレークスルーとして注目され、数々のメディアでとりあげられた。『Gastroenterology』『PNAS』『Science Translational Medicine』などに論文を発表している。

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