哺乳びんやおもちゃの殺菌は過敏な反応だ 泥だらけで遊ばせるのは悪いことではない
都市に住むなら、大前提として、どんなときでも感染症にかかっている人が大勢いると考えなくてはなりません。幼い子どもと一緒にニューヨーク市地下鉄に乗っているところを想像してみると、感染症にかかっている人が同じ車両にいる可能性はかなり高いでしょう。あるいは、地下鉄に乗ってはしゃいでいる子どもが、しきりに触っているその窓ガラスに、さっきまでその車両にいた人がくしゃみをして飛び散らせた大量のウイルスが残っている可能性も大いにあります。だとしたら、地下鉄や他の公共交通機関を利用するのは避けるべきでしょうか? あるいは、たくさんの人が行き交う場所で何かに触るたびに、必死になって消毒用ハンドジェルを使うのがいいのでしょうか?
もちろん、そんなことはすべきではありません。ニューヨークで地下鉄に乗るのに重大なリスクが伴うほど感染症にかかりやすければ、人間は何千年も昔に絶滅していたでしょう。人間の免疫系は強力なので、このようなかたちでの病原体との接触には対処できるのです。
とはいえ、人口密集地域にいる場合には、感染のリスクを抑えるために衛生習慣を守ったほうがいいでしょう。つまり子どもには、そういう場所では床で遊んだり、そこにあるものをなめたりしてはいけないことや、家に帰ったときや食事の前には(通常のせっけんと水で)手を洗うことを教えましょう。
自然のなかで遊ぶときには?
一方、子どもたちが自然のある場所に散歩に行ったり、そこで遊んだりするときには、話はまったく違ってきます。そういう場所では、病気の原因となる微生物に感染するリスクは大幅に低くなります。
動物のふんはダメですが、子どもたちには、土や泥、木や草、昆虫など、何でも触りたいものを自由に触らせても大丈夫です。子どもたちが汚れたら、衝動的にすぐにきれいにしてしまわないようにします。実際のところ、いまの子どもたちは昔の子どもに比べて、外で過ごす時間がとても少ないので、外にいるその短い時間には泥だらけで遊ばせるのが理想的です。
次に公園か、ハイキングに行くときには、水の入ったバケツと、シャベルを用意することをおすすめします。数分もしないうちに、ほとんどの子どもが泥まんじゅうをつくり始めるか、自分の(そしてあなたの)顔に泥を塗りたくろうとするはずです。土が子どもの口に入っても、ぎょっとしないこと。彼らはすぐに、土はそれほどおいしくないと気づきますから、口に入れるのが癖になることはまずありません。
たいていの子どもには泥だらけになりたいという本能的な欲求があるのですが、現代の暮らしのなかではそうした欲求は親が育ててやらなければなりません。
「哺乳びんを殺菌する必要はありますか? 必要だとしたら、何歳までするべきですか?」という問いも少なくありません。
赤ちゃんの哺乳びんは必ず殺菌すべきという考えに慣れている多くの人たちにとって、この質問への答えはショックかもしれません。