日本発「グルテンフリーパン」の侮れない実力 米粉パンという新たな文化

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戸越銀座商店街にある「米魂」では、取り扱っている約半分がグルテンフリーパンだ(編集部撮影)

品川区の戸越銀座商店街にも米粉パンで名を馳せている店がある。その名も「米魂(べいこん)」。使用する素材には、こだわりがあり、パンを膨らませる材料は、一般的なイーストではなく、「天然酵母」として人気が高い白神こだま酵母を使用。砂糖は奄美諸島産のきび砂糖、塩は天日塩と沖縄海水から作った粗塩、油脂は米油、エキストラバージンオリーブオイル、有機ココナツ油のいずれかを使用する。酵母以外の食品添加物はいっさい使っていない。

米粉は、しっとりしていて保湿性がよく、よく膨らむ品質の高さで知られる熊本産の米粉で低農薬のもの、それほど膨らまないがモチモチ感がある佐渡産を使い分ける。新潟県佐渡島は、農薬を苦手とするトキが田んぼに舞い降りるほど、ほとんど農薬を使わないコメの栽培で知られる。

レシピ開発が難しい

商店街を歩く人が次々と入ってくる。常連客も少なくない(編集部撮影)

店主の富室毅氏が米粉パンの店を開いたのは、もともと他店と差別化するためだった。パン屋修業をして18年。独立したいが、「町のパン屋は飽和状態だ」と迷っていた2009年、町で売られていた米粉パンを食べ、「モチモチ、フワフワで小麦にはない食感」に驚いた。

「これならやれるかな」と思って店を開いたのが2010年7月。当初は「Bei’s More」という名前だった。最初は、2割の小麦グルテンを加えたパンがほとんどで、グルテンフリーのパンは1割ほどしか売っていなかった。レシピ開発に苦労していたからである。

「発酵の際の温度管理を、小麦のパンより繊細にやらないといけない」。試行錯誤していた2014年ごろ、グルテンフリーのパン教室を開き、レシピ本も出版している料理研究家、大塚せつ子氏に出会った。大塚氏の教室に通い、安定した品質のパンが作れるようになった。

グルテンフリーという言葉を知ったのも、大塚氏を通して。富室氏も小麦製品をほとんど取らない生活に切り替えてみたところ、体が軽く感じられるようになったという。店の名前も米粉パンの店とわかるよう「米魂」と改め、2016年11月に全商品をグルテンフリーにした。

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