日本発「グルテンフリーパン」の侮れない実力 米粉パンという新たな文化

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保険関係の事務職員として働きながらも、「パンを作りたい」という思いを抱き続けた浅岡氏。2000年代後半、米粉パンを売るパン屋を見掛けるようになり、パン屋への夢が再燃する。2009年にパナソニックがホームベーカリー用に発売した、米粉100%のミックス粉を見つけると、家でパンを焼いてみるように。この頃、価格が上昇した輸入小麦の代替材料として米粉に注目が集まり、米粉ブームが起こっていたのである。

会社員を辞め、レシピ本などを参考にしながら、手探りで米粉パンを作り始めた浅岡氏。生地の練り方を工夫し、水を加える量、タイミング、発酵のタイミングを見計らう。「米粉100%のパンは、乾くとカチカチになってしまうので、表面を乾かさないように蒸気をかけながら焼くのですが、湿度を調整するのも試行錯誤。最初は小麦のパンのような焼き色もつけられなかった」と話す。

顧客の半分はアレルギーを持つ人

2010年5月には、生まれ育った東京・三鷹の商店街の外れに、試験的に小さな米粉パン専門店をオープン。移動販売も行い客が少しずつ増え、「もうちょっと人通りのあるところでちゃんとした店を作れば、何とかなるんじゃないか」と手応えをつかみ、「こめひろ」の出店に踏み切る。移動販売で行った折、近くに大きな団地があり、親子連れが多く反応がよかったことが決め手になった。

めいやおいの意見を聞きながら、つねに新たなレシピ開発に取り組んでいるという(編集部撮影)

小麦のパンと比べかなり小ぶりなので、当初は「パンはどこですか?」と聞かれることもあったが、少しずつ米粉パンへの認知度もアップ。ここ2、3年はグルテンフリーブームもあって、客足は三鷹時代と比べると4倍、現在の店にしてからも3倍弱にまで増えたという。モチモチの食感やシンプルな材料であることが気に入り、固定客になる人もいる。

顧客の半分は、アレルギーを持つ人たちだ。2013年夏からインターネットで通信販売を始めたこともあり、北海道から沖縄まで顧客は全国にいるという。「夏休みだと、『飛行機に乗って来ました』という人もいます。『パンを息子に選ばせてあげるのは初めて』と言われると、うるっときます」と妻の絵美子さん。

「アレルギーのない人と同じように、トレーを持って選べることを喜んで、写真を撮る人もいます。アレルギーがあるため、食が進まなかった子どもが、おばあさまが送ってくれたこちらのパンを、『一口食べたらうわーっと食べる姿を見て、涙が出ました』という内容のメールをもらったこともあります。パン作りは重労働ですが、こんなに人の役に立っていると知ると、やりがいになります」

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