小麦粉による体の不調、理由は単純ではない グルテンを悪者扱いするのは早計だ
「世界の人々はグルテンの真実を知ろうとしない」。米ニューヨーク州のフリービルにあるコーネル大学の研究農場で、大学院生リサ・キシング・クーセクは冗談交じりに言うと、自らが発見した「真実」を語ってくれた。
その研究結果がついに広く知られるようになる。「グルテンに関するガイドライン」が、定期刊行物「食品科学と食品安全の包括的レビュー」に掲載されたからだ。同ガイドのために、キシング・クーセクと共同研究者たちは200以上の科学研究論文を精査し、小麦の種類と加工法が人体にどう影響するのか調査した。
グルテンだけに注目すべきじゃない
その結論は控えめなもので、「小麦は食べるな」的な宣告とは程遠かった。
キシング・クーセクはまず、グルテンとそれに関連する病理学を調べた。「グルテンだけに注目すると沢山のことを見逃してしまう。だから実際に何が起きているのかを知るために、私は小麦全体に注意を払った」と彼女は言う。
確かに彼女の調査はグルテンより広い範囲をカバーしており、ガイドには、小麦が引き起こす問題や、小麦の種類によってその問題がどのように異なるか、そして加工方法が及ぼす影響などが盛り込まれた。セリアック病から、小麦アレルギーや、非セリアック性小麦過敏症、そして果糖吸収不全症や過敏性腸症候群に至るまであらゆることを検証しているのである。
この研究は、コーネル大学が行っているほかの研究とも連携。共同研究機関は、小麦の在来種を調査するため2011年に米農務省から助成金を受け、フィールド実験や実験室での解析、製パン試験を2016年まで続けた。
論文には、小麦の胚と小麦の遺伝学について綿密な記述が含まれている。ガイドには盛りだくさんの情報が詰まっているが、キシング・クーセクはそれを解りやすいビデオで解説している。