22歳の元名門女子大生が貧困に喘ぐ深刻事情 学費払えず退学、パジャマ姿で取材場所に

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昨年夏(大学3年生の夏)には学生生活どころか、なにもできなくなった。

統合失調症の陽性症状では幻覚や幻聴に苦しみ、陰性症状にある現在は、まったくの無気力状態だ。これまでは、サークルの先輩、出会いカフェで知り合った介護福祉士、自殺未遂のきっかけとなったコンビニ店長など、知り合った男性に依存しながら、なんとか生きてきたが、もはやギリギリの状態だ。

幻聴に幻覚、そして錯乱

「この前、体調的にとても病院に行くことができなくて、一度薬を切らしたことがあった。金曜日に薬がなくなって月曜日まで薬がない、って状態。ずっと玄関のドアをドンドンドンドンってたたかれて、ああー!って女の叫び声が聞こえて、何?と思って、玄関ののぞき窓をのぞいた。そうしたら首から上のない人が2人いて、お母さんと子どもみたいな。そうしたら玄関がぐにゃって変形して、私の腕から虫が湧いてきて、虫が湧いているのに2人の手が伸びてきて錯乱状態になりました」

二の腕にいくつものひっかき傷があった。虫が湧いて錯乱したときの傷だった。

ここで話は終わった。

「奨学金の借金が500万円くらいあり、今年中に自己破産します。もう一度勉強して、志望する国立大学に入って人生逆転したいです。もうラストチャンスと思っていて、早く勉強をはじめたい。今は体調的に無理だけど、落ち着いたらすぐに勉強はじめます」

そう前向きな希望も話してくれた。しかし、とてもではないが、勉強をはじめることなど無理だろう。仮に受験前に病状がよくなりなんとか入学できたとしても、アルバイトで生活費と学費を稼ぐのは難しい。自己破産を今年中にするので、奨学金やローンももう使えない。なんて声をかけていいのかわからなかった。

あまりに薬の量が多かった。彼女に許可をもらい、お薬手帳の現在の処方箋の写真を撮って知り合いの薬剤師に見てもらった。

「一度にこれですか。信じられない状態ですね。カラダがだるいとか死にたいとか、言っていませんか? 飲むことでマイナスになっていないのか心配になります」

薬剤師は驚いていた。現状は自殺願望はなく、無気力で過食症ぎみだったことを伝えた。

「今、自殺願望がないなら陰性症状かもしれないですね。典型的な処方カスケード(薬の追加が悪化を招くこと)な気がするので減薬できればいいように思います。年齢や体格、既往歴、肝腎機能、治療経緯がわからない中でコメントは難しいですが、病院を変えることも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。本当に不安が強くて、強く強く不眠を訴えられたのでしょうね。いい方向に行ってほしいです」

後日、石川さんに薬剤師のアドバイスを伝えた。まだ、22歳。立ち直ってほしい。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けてつづけている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮社)、『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)など多数。Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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