「忖度疲れ」で追い詰められる人の精神構造 「忖度を要求する人」から身を守る正しい方法
この「言葉の否定」が、「空気」の支配を許す一因になっているのは確かである。コミュニケーションにおいて論理的な言葉が重視されず、「空気」に支配されやすい社会で、忖度がなくなることはありえない。
踏まえておきたい3つのこと
「忖度疲れ」にならないためには、それを踏まえたうえで、次の3つを実行することが必要だ。
2)観察と分析
3)あやふやなままにせず明確にする
それぞれについて解説しよう。
1)まず気づく
日本のサラリーマン社会には忖度のネットワークが張り巡らされていて、忖度のクモの糸からなかなか逃れられない。問題は、それに気づかず、知らず知らずのうちに忖度してしまう方が少なくないことだ。
「忖度疲れ」に陥り、不眠や気分の落ち込みなどの症状を訴えて筆者の外来を受診した方の多くも、忖度するのが当たり前になっていて、忖度がはらむ問題に全然気づいていなかったからこそ、手痛いしっぺ返しを食らい、心身に不調を来したように見える。
必要なのはその状況に気づいて自覚すること。何よりも困るのは、忖度がはらむさまざまな問題に気づかぬまま長年過ごしているうちに、手遅れになったり、一気に問題が噴出したりすることだ。
このように、はっきりした自覚症状がなく、危険を自覚しないまま放置しているうちにどんどん進行し、ある日突然命にかかわる状態になって初めて重大性に気づく病気を「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ぶ。代表的な病気が高血圧で、放っておくと脳卒中や心筋梗塞などを発症し、生命の危機を招きかねない。
厄介なことに、「忖度疲れ」は「サイレントキラー」になりうる。伝統的に「世間」を気にし、「空気」に流されやすい日本人は、半ば反射的に忖度してしまい、「忖度疲れ」に陥りやすいが、そのことに気づいていない方がほとんどだ。それをまず自覚すべきである。
2)観察と分析
あなたをがんじがらめにしている忖度のクモの糸を解きほぐし、場合によっては断ち切るのに必要なのは観察と分析だ。まず、一歩引いて、なぜあなたは忖度するのかを見極めなければならない。
その際、自らに次の質問を投げかけてみるといい。
② どんな見返りを期待しているのか?
③ 誰に認められたいのか?
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