「忖度疲れ」で追い詰められる人の精神構造 「忖度を要求する人」から身を守る正しい方法

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この3つの質問に対する答えをじっくり考えて、自分自身が忖度する理由を分析しよう。たとえば、あなたが会社員で、つねに上司の意向を気にかけており、上司の希望を察したら、それを満たすべく最大限の努力をしている場合。あなたのやっていることはまさに忖度であり、3つの質問を自分自身に投げかけることによって分析するのだ。

まず、失うことを恐れているのは、やはり現在の安定した生活、そして上司からの評価のはずだ。次に、見返りとして期待しているのは、昇進や昇給だろう。さらに、上司に認められたいという承認欲求が強いからこそ、忖度する。

このように自分が忖度する理由を分析することによって、さめた目で自分自身を眺められる。その際、「自分が失うことを恐れている評価は、それがなければ生きていけないほど大切なものなのか」「忖度すれば実際に見返りが得られるのか」「忖度すれば本当に認めてもらえるのか」などと、少々意地悪な質問を自分自身に投げかけるべきだ。

最終的には「忖度することは、自分が生きていくうえで必要不可欠なのか」と自問することをお勧めする。その結果、自分が失いたくないものを守るためにある程度の忖度はやむをえないと思えば、忖度を続けていくしかない。ただ、あくまでもさめた目で、忖度がもたらすメリットとデメリットをはかりにかけながらである。

忖度したら、報われる?

逆に、自分が失うことを恐れていたものは、それがなければ生きていけないほど大切なわけではなかったとか、忖度しても必ずしも報われるわけではないと気づいたら、しばらく忖度をやめてみることをお勧めする。

忖度するのが当たり前になっていた方は、全然忖度しなかったら、人間関係がぎくしゃくするのではないかと危惧なさるかもしれない。しかし、実際には、必ずしもそうなるわけではない。むしろ、忖度のクモの糸から解き放たれて、余計な気苦労をせずに済むはずだ。

3)あやふやなままにせず明確にする

日本社会で忖度がはびこるのは、「空気」に支配されやすいからであり、先述したとおり、その一因に「言語の否定」がある。とすれば、忖度の弊害を減らすには、できるだけ言葉にして伝えるしかないということになる。つまり「言わなくてもわかる」という思い込みを捨てることが必要だ。

これは、自分の身を守るうえでも大切なことである。というのも、狡猾な人ほど、自分の要求をはっきり言わずに、欲しいものを手に入れようとするからだ。それとなくほのめかしはするものの、何を望んでいるのかは決して明確にしない。他人に因縁をつけて金銭を要求する悪人が、「カネをくれ」などとは決して言わず、「誠意を見せろ」と脅すのと同じである。

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