「働き方改革」はなぜ期待外れになったのか ダメ会議撲滅会議自体がダメ会議だった皮肉
しかし政府による「働き方改革」の進め方は不誠実だと感じた。「働き方改革」によって生じるであろう副作用についての説明が不足しているからだ。
当初は世論も「働き方改革」には好意的だった。しかしここに来て、風向きは変わっている。見せかけだけの「働き方改革」が中間管理職を苦しめているという調査結果が発表されたり、「働き方改革疲れ」という言葉まで聞かれるようになったりしている。「プレミアムフライデー」は言うにおよばず。
「働き方改革」の牽引役のようにふるまっていたIT企業「サイボウズ」まで「働き方改革」を批判する新聞広告を出した。「これは、私たちが言っていた働き方改革ではない」と。ただこれは、1年前には十分予測できたはずだ。なぜもっと早くに「いまの政府の働き方改革ではダメだ」と言わなかったのか……。まるで結果が見えてからの掌返しではないか。
「生きるか死ぬか」の話にすり替わった「働き方改革」
いずれにしても、すでに副作用が表れ始めているのである。そこで私たちは「ダメ会議を減らして、長時間労働を是正しようと訴えていた働き方改革実現会議そのものがダメ会議だったという皮肉はなぜ起こったのか」について議論を重ねた。
おおた としまさ(以下:おおた):それで、具体的に「働き方改革実現会議」ではどんな議論がされていたのか、確認しましょうか。
常見 陽平(以下、常見):僕、ちゃぶ台、ひっくり返す答えを言いますよ(笑)。「議論」なんて、全然されていません!
おおた:おっと、はっきり言っちゃうんですね。
常見:意見は言い合ったかもしれない。でも、議論はしていない。あれは、議論する場ではなく、意見を聞く場なのですね。
おおた:なぜ「働き方改革実現会議」が尻つぼみの話になったのか。少子化をなんとかしなければならない、だけど労働力を増やさなければならない、長時間労働を減らすことによって女性も活躍できるようにしなければならない、って話だったのに、いつの間にか過労死ラインの話になった。
電通の新人女子社員の過労自殺事件があって、過労死ラインはさすがに守らなければいけないという意識が高まった一方で、もともとの長時間労働規制の目的が忘れられた。加えて「長時間労働撲滅プロジェクト」という署名キャンペーンもあったでしょう? 内容的には反対する理由もないんです。戦争反対、ってふわっと言っているようなものだから。
でも、あれによって「働き方改革」の文脈における長時間労働是正の目的がそもそも何だったのかがぼやけてしまった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら