「働き方改革」はなぜ期待外れになったのか ダメ会議撲滅会議自体がダメ会議だった皮肉
常見:当初するはずだった各議論が「安全衛生管理、まずきちんとやりましょう」という1次水準に戻ったから、議論ができなくなった、と言い換えてもいいですけど、そこは冷静に切り離して議論するべきだったと僕は思います。もちろん、電通の事件はとても痛ましいものです。二度とあんな悲しいことが起こらないようにすることは、当然の前提です。
おおた:その一方で、罰則はつけるとしても、例外として繁忙期に月100時間の残業を認めている。
常見:月60時間だって、やり方を気をつけないと、ワークライフバランスの崩壊を誘発します。まして、特例で月100時間なんて数字を出したら……。
おおた:僕は「少子化対策を本気で考えるなら、現状においては、1日8時間労働でも多いんです」という話が展開されるのかと思っていたんですよ。だけど、36協定で残業を減らそう!という話にすり替わった。
常見:論点がワープした要因は、まず電通問題に代表される問題の根深さ。そして、うがった見方であり推測ですが、少子化対策を叫んでいた論者が、長時間労働是正くらいでは少子化に歯止めがかからないことに気づいたからではないかと思います。まずは長時間労働に規制をかけること、それにあわせて、長年の夢である“高度プロフェッショナル制度”と、裁量労働制の拡大を入れ込むことだと。そう議論を盛り上げていた人がいました。
トライ&エラーをしながら、目標に近づけていくべき
おおた:ワークライフバランスの改善や少子化に歯止めをかけるための長時間労働是正の議論を本気でする気があるなら、一律にできることではないと思うので、業種や職種ごとに考えて、どれくらいの労働時間を目指しましょうという努力目標を設定し、そこにできるだけ近づけるために、各業界、各企業、各職種で何ができるかというアイデアを丁寧に愚直に出し合い、トライ&エラーをしながら、目標に近づけていくのが、正しい議論の進め方だろうと思います。
急がなければならない難しい問題ですが、急がば回れ、です。一気にバサッと解決!みたいな方法に頼れば、一見、是正はできたように見えるかもしれないけれど、それは本質的に意味のある是正を実現する刃にはなりませんよ。
常見:課題は明確なのですけどね。仕事量が多い、仕事を任さないと回らない。そうした根本的問題に対する正攻法の是正になっていない。もちろん、労働時間に規制をかけることについては、はっきりとイエスの立場です。
だけど、強引な規制は、企業のコンプライアンス新人研修みたいなもので、「研修受けたよね?」「セクハラもパワハラも情報漏洩もダメだからね?」という、何かあったときに言い訳ができない状態を作りにいっているように見えます。サービス残業にお墨付きを与える施策にしか見えません。
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