夫が死んだら妻は義父母を養う義務はあるか 縁を切ったら、遺産や年金はもらえない?

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ただし、姻族関係を解消できるのは配偶者のみです。子どもと親族との関係は解消されません。つまり、恵美さんには関係がなくなる義父母でも、子どもにとってはおじいちゃん、おばあちゃんであることに変わりはありません。

夫の遺産相続や遺族年金はどうなるのか

復氏届や姻族関係終了届を提出すると、義父母などと縁を切りたい人にとっては、心理的にはスッキリするかもしれません。しかし、金銭の面でのデメリットはないのでしょうか。具体的にいうと、遺産相続や遺族年金に影響がないかが、気になるところです。

実は、遺産相続については影響はありません。いったん相続した財産を返却する必要などはなく、通常と同様、遺産を受け取ることができます。

また義父母が死亡した場合、子(この場合は恵美さんの夫)が生きていれば子が相続した分を、孫(つまり、夫と恵美さんの子)が「代襲相続」する権利があります。この権利は恵美さんが姻族関係終了届を提出していてもなんら影響はなく、権利は残ります。このように、遺産相続についてはデメリットなし、ということです。

もう1つ、気になるのは、「遺族年金」です。

夫が死亡した場合、一定の条件を満たすと、配偶者は遺族年金を受け取ることができます(詳しくは「遺族年金はちゃんと申請しないともらえない」をご覧ください)。

もし、遺族年金が受け取れなくなると困りますが、大丈夫です。復氏届や姻族関係終了届を提出しても、遺族年金は受け取ることができます。妻が遺族年金(遺族厚生年金の場合)をもらえなくなるのは、「再婚」「死亡」「直系血族・姻族以外の養子になる」場合であり、旧姓に戻しても、夫の死後に夫の家族との縁を切っても、影響はありません。

夫の親類と縁が切れるし、お墓にも入らなくていい。遺族年金など、もらえるおカネには変わりない。どうでしたか。少しは、肩の荷が下りますね。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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