夫が死んだら妻は義父母を養う義務はあるか 縁を切ったら、遺産や年金はもらえない?

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恵美さんはまず、苗字を旧姓に戻すことにしました。

復氏届で旧姓に戻るのは本人のみ、では子どもは?

配偶者が死亡した際、婚姻中の姓のままでいるか旧姓に戻るかは、本人の意思で自由に決めることができます。恵美さんのように旧姓に戻したい場合は、本籍地または住所地に「復氏届」を提出します。そうすれば、結婚して入った籍から抜けることができます。

恵美さんは、「義父母の許可が得られるかしら」と不安でしたが、心配無用。「復氏届」は本人の意思で提出することができ、死亡した配偶者の親族の同意は必要ありません。

復氏届の提出には期限がなく、いつでも手続きできます。ただし配偶者が外国人だった場合は、亡くなってから3カ月を経過すると家庭裁判所の許可が必要になります。

ここで気をつけたいのは、復氏届によって旧姓に戻るのは本人のみ、という点です。恵美さんには夫との間に子どもが1人いますが、恵美さんが復氏届を提出して旧姓の山本に戻っても、子どもの姓は田中のままです。そうなると恵美さんと子どもは別々の姓になり、恵美さんの戸籍に子どもを入れることはできません。

「子どもも私の旧姓である山本姓にして、私の戸籍に入れたい」(恵美さん)という場合は、まずは家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出し、子どもの姓を山本に変更。その後、市区町村に「入籍届」を提出すれば、子どもを恵美さんの戸籍に移すことができます。

こうして籍を抜けば、まずは「安心」と思いがちですが、そうはいきません。復氏届で旧姓に戻っても、義父母など配偶者との親族関係は変わりません。扶養の義務や姻族としての権利は、継続することになります。離婚すると姻族関係は自動的に消滅するのですが、死別の場合、姻族関係はそのまま継続され、義理の親子関係や親戚関係はそのまま残るのです。

では、配偶者の血族との親戚関係を解消したいなら、どうすればいいでしょうか。この場合、本籍地または住所地の市区町村に「姻族関係終了届」を提出します。本人の意思で届け出ができ、親族の同意は不要です。この届け出によって配偶者の父母や兄弟姉妹などを扶養する義務はなくなります。

恵美さんの義母は浪費家で、夫が生前に時々こっそり自分の父母に仕送りしていたのは、恵美さんも知っています。この先、おカネを無心されることがないとは限りません。しかし、姻族関係終了届を提出すれば、法的に扶養の義務はなくなるわけです。なお、この手続きをする場合、期限の定めはありません。

次ページ復氏届や姻族関係終了届を出すと「損」をする?
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