首相も視察した資生堂の企業内保育所とは? 10年先を行く、資生堂の育児支援制度

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0歳児、1歳児を受け入れると採算悪化

――カンガルーム汐留は第一京浜に面した汐留の超一等地にあり、地代が高そうです。また多くの保育士が子どもたちの面倒を見ており、人件費も高そうです。経費で苦労しそうです。

ご指摘のとおりだ。保育料として0歳児から2歳児までは月に5万円、3歳児から5歳児までは月3万円の保育料を払ってもらうが、仮に定員いっぱいになったとしても保育料は人件費の半分程度にしかならない。

久保 光司 人事部 ダイバーシティ推進グループ リーダー。 1985年、資生堂入社。
営業経験を経て、1990年にマーケティング部門に異動しセルフチャネル向けブランドの育成に携わる。 その後、同社ホームページの企画業務等を経て2008年10月より人事部にて人権啓発、ダイバーシティ活動を推進。

また定員も簡単に増やせない。ひとりの保育士が見る乳幼児の数は定められており、0歳児は3人、1歳児と2歳児は6人、3歳児は20人、4歳児以上は30人だ。
 簡単な計算で、0歳児・1歳児・2歳児の保育だけでは収支がプラスにならないことがわかる。保育士の給与と施設費を保育料だけではまかなえない(0歳児で5万円×3人で15万円、1歳児・2歳児で5万円×6人で30万円)。逆に20人、30人と一気に保育幼児数が増える3歳児以上を多くすれば、収入は大きくなる。

待機児童が多いのは収益性が悪いとされる0歳児、1歳児である。企業内保育所は、子どもが待機児童となり困っている自社社員に対する福利厚生施策だから、0歳児、1歳児を多数受け入れることとなり、いわゆる“持ち出し”を増やさざるをえない。

――政府は待機児童解消のために企業内保育所の規制を緩和して新設を促す考えのようです。

なかなか難しいと思う。というのは、今、お話したように0歳児、1歳児を無条件で受け入れると、さらに支出超過にならざるをえないからだ。

企業内保育所を新設すると、設置費と保育遊具など購入費にかかわる助成金があり、運営開始から10年間は運営費にも助成金があるが、10年経つと打ち切られる。カンガルーム汐留の助成金も今年の8月までが対象で、その後はなくなるが、助成金の額は運営費の10%にも満たないため、打ち切られると継続できないというほどではない。

しかし助成金があっても支出超過になることがわかっていて、10年後にはその助成金も無くなるというのでは、企業は保育所設置に二の足を踏まざるをえない。企業内保育所の新設を促す考えであれば、助成金のあり方についても検討をしていただきたいと思う。

(撮影:尾形文繁)

 

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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