中国で「飲食店のドタキャン」が起きない理由 テクノロジーが「不信社会」を塗り替える

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中国人は安心して日本の飲食店を訪れ、おススメ料理が食べられるし、飲食店側も、昨今、日本で社会問題化しているno show問題(予約だけして来店しない、トンズラする、時間を過ぎたのでお店側がお客に電話しても無視する)などを回避できて安心だ。万が一、お客が来なかったとしても、お店側には代金がきちんと支払われるし、アリペイのように仲介業者がいるので安心できる。

このような仕組みを日本でも導入すれば、飲食店が泣き寝入りしなくて済む。また、ずっとインバウンドの取材をしてきた私から見ると、中国人観光客のイメージアップ(事前払いの推進になり、トンズラしない)にもつながるので、とてもよい話だと思った。

しかし、考えてみれば、日本では飲食店で先払いする、という話はあまり聞かない。なぜその仕組みがあまり浸透していないのか、はっきりとした理由はわからないが、日本では「お客様は神様」であり、双方に最初から暗黙の了解で一定の信頼関係があり、性善説で物事が動いていて、お互いのレベルがある程度均一な狭い国土に住んでいるという生活環境により信用社会が確立していたから、というのが理由ではないだろうか。

お客は予約したお店を訪れるのは当たり前。店のほうも電話1本の予約でそれを信用するのが当たり前。「誰もが社会のルールをきちんと守るのが当たり前」の社会がこれまでの日本だった。だが日本でも多様化が進み、かつての”大前提“が少しずつ崩れ、日本人のマナーの低下が叫ばれてきたとき、片方が大変なリスクを負ったり、不正が発覚したりという悪循環が少しずつ始まっているのではないか、と危惧してしまう。このような構造は、今、日本で起きている諸問題にも当てはまるのではないかと感じている。

考えてみると、海外のホテルなどはネット予約サイトでは先払いか、予約の際にクレジットカード番号を入力しておき、現地払いをするというのが基本だ。どの国でも顔の見えない相手にはリスクヘッジをするのが当然だ。もしかしたら、先払いがあまり浸透していないのは、日本などいくつかの国だけなのかもしれない。

信用社会に向かって

『なぜ中国人は財布を持たないのか』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

繰り返すが、性悪説に立つ中国は「誰もが世の中のルールを守るとは限らない」「どこに、どんなリスクが転がっているかわからない」「他人のことは信用できない」社会だった。社会システムやルールが出来上がっていなかったから、濃密な個人の人間関係が頼りだった。

だが、だからこそ、アリペイをはじめ、信用を1つずつ積み重ねていくよい仕組みがこの国から生まれたのではないだろうか。世界がますます多様化していく中で、善人も悪人もいるという前提で合理的な仕組みを取り入れるというのは健全でよいことではないか。

信用社会に向かって、1歩ずつ前進する中国社会の取り組みを見て、思いがけず、日本について考えさせられる機会になった。

中島 恵 ジャーナリスト

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なかじま けい / Kei Nakajima

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、フリ―に。著書に『なぜ中国人は財布を持たないのか』『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(すべて日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『「爆買い後」、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)などがある。

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