中国で「飲食店のドタキャン」が起きない理由 テクノロジーが「不信社会」を塗り替える

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これはアリペイのアプリの1つで、簡単にいえば、自分の評価をまとめた採点表のようなもの。採点の結果、よい行いをすれば自分の評価が高くなって、悪い行いをすれば評価が下がるというものだ。アメリカにある「クレジットスコア」という仕組みとほぼ同じだ。

政府に認定された正式な評価基準ではないが、2015年1月に導入されて以降、急速に利用者が増加し、2017年6月現在、約3億5000万人もの人が利用している。これまで中国では個人の信用を客観的に測るものがなかったので、初の試みだ。

ポイントが高いほど「社会的信用」が高まる

アリペイは自社の決済システムを利用した人々から、膨大な情報を得ている。そのビッグデータを今後政府と連携して、社会のあらゆるものに活用していくプロジェクトが動き出しているが、そのデータをもとに個人情報を自動的に分析、それを点数で評価しているのが、この芝麻信用だ。

たとえば、シェア自転車をきちんと返却したか、公共料金を毎月支払っているか、交通違反をしていないかなど、アプリに残るさまざまな履歴データを分析し、素行がよければ、芝麻信用のアプリに自動的にポイントが加算されていく。

評価基準は明確には公表されていないが、ポイントが高ければ高いほど、その人の「社会的信用」が高まり、日常生活がしやすくなる。日本人的には、そこまで個人情報を取り出されることに空恐ろしさも感じるが、もともと情報が管理されていることが当たり前だった中国では、個人情報やプライバシーに対する意識は薄く、人々の間では個人情報を吸い上げられるというマイナスよりもスマホ決済のメリット(利便性)を優先する気持ちのほうが勝っている。

具体的には、ポイントが高いとホテル予約の際に保証金が不要になったり、婚活サイトでは優先的にいい条件の相手を紹介してもらえたり、海外旅行のビザが早く取得できたりする。逆にポイントが低いと住宅ローンが借りにくくなったり、シェア自転車が使用できなくなったり、就職試験で不利になったりする。

スマホ決済をすれば残高も丸見えなので、スマホ決済自体が使えなくなる。スマホのアプリなので、外部の人にはわからないが、自分から(あるいは企業などから開示を求められた場合は)開示できる。

スマホ決済の利用ですべてが透けて見え、ここまで明確な形での“ご褒美”や“ペナルティ”が課せられるというのは、日本人の私から見ると違和感があるが、杭州の友人はうれしそうにこう評価する。

「中国を“いい国”に変えて、中国人の行いをよくしていくためには、とても必要なことだと思います。シェア自転車も日本にはメリットが伝わっているようですが、実際には自転車にいたずらする人がいたりして、問題大ありです。そういう“悪いこと”をする中国人の芝麻信用の評価を低くすれば、自転車を借りられなくなるし、悪いことをしたら制裁があるのだ、と身に染みてわかります。よい行いを積み重ねていけば、社会はよくなり、自分にもメリットがあり、いつかお互いを信用できるようになる。芝麻信用で考えを改め、中国人の行動が変わるきっかけになればいいと思います」

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