ここまでの実例を見て、大切なポイントが2つあると思います。1つは課題を小分けして、1回ごとの量をマーカーで囲って明確に示すことです。「とりあえずこれだけやればいいのだ」とはっきりさせて、ハードルを下げてあげることが大事なのです。
大人の仕事でもそうですが、大量の課題を目の前にすると気持ちがくじけそうになります。ところが、少量ずつ区切って小分けすれば、できそうに思えてやる気が出てきます。
もう1つはストップウォッチとタイマーで時間を意識させたことです。ストップウォッチの場合は新記録を出したいという気持ちがモチベーションになり、タイマーの場合はブザーが鳴るまでにクリアしたいという気持ちがモチベーションになります。
次に、Eさんは、宿題でよく出る教科書の音読に集中させる方法を考えました。よくあることですが、それまではEさんの次男も、「はやく読み終わりたい」という気持ちから早口でいい加減な読み方をしていました。ですから、読み終わるまでの時間をストップウォッチで計るという方法では、さらに早口でいい加減に読むようになるのが目に見えていました。そこで、タイマーをセットして、5分間だけ集中して音読させてみました。すると、ゆっくりはっきり大きな声で読むようになりました。
急いで読んでも、どうせ5分間は読まなければならないので、早口で読む必要がないわけです。5分間では全部読み終わらないこともありますが、約束を守って途中でも終わりにするそうです。そして、次の日はその続きから読み始めます。ごくたまに、子どもが自主的に最後まで読むこともあるそうですが、Eさんから「どうせなら最後まで読みなよ」などとは言わないようにしているそうです。
できるという自信にもつながった
次に漢字の書き取りです。Eさんの子どもは苦手で、いつも途中でやめてしまい、手いたずらにふけったり漫画を読み始めたりしていたそうです。そこで、タイマーを使って、「2分書いたら2分休む」を繰り返す“サンドイッチ方式”にしてみました。すると、思ったとおりよく集中できるようになり、休み時間も入れて書き取りノート1ページを15、6分で書けるようになりました。それまでは1時間近くかかることもあったので、格段の進歩といえます。
この頃になると、子どもの中に「ストップウォッチやタイマーを使えばできる」というよい思い込みもできていたようで、「この自信も大きかった」とEさんは回想しています。
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