――具体的にはどのような工夫を?
たとえば同じシーンでも、夜と昼の照明で雰囲気を変えてみるといったことです。宇宙船ばかりを映すと、暗いシーンが多くなるので、どこかで明るいシーン入れたりして物語が一つのトーンにならないように気を付けました。色味やライティングなどを含めて、画面のトーンをシーンごとに変えていくと、画面のトーンに幅が出てきて、リッチな映像に見えてくる。労力はあまりかけずに、同じようなシーンに見えないようにということは心がけました。
それともうひとつ、大きいのはストーリーです。どこまで先が読めない展開にしていくか、そのあたりが渾然一体となっていく。要素を機械的に減らすのではなく、演出的な見地も含めて、バランスよく減らしたり増やしたりすることが大事。映画全体を見ながら、効率化をうまく果たして、最終的なクオリティーを上げていくための作業が、僕は意外と好きなんです。
――それにはスタッフとのやりとりも大事になるのでは?
「作業的にこれは無理です」と言われたときに、「これは無理かもしれないけど、ただ単になくすのではなく、違うやり方でやってみれば同じような効果が出るんじゃないか」と提案してみる。監督の作業というのは、そういったことも含めて面白い。もしかしたらそれはプロデュースワークに近いのかもしれない。でも、そこまで目配りをしないと、最終的なものの保証はできない。
CGの映画をやり始めた頃は、スタッフから「(予算には)あまり首を突っ込まずに、やりたいことだけやればいい。監督が言いたいことは言った方がいい」と言われたこともあった。それは確かに理想論ですが、それでも「できません」と言われてしまえば、もっと現場にどんどんどん入り込んで、どうしたらできるのかを考えざるを得ない。その繰り返しですよね。もしかしたら、明日には新しいことが簡単にできるソフトウェアが開発されるかもしれないし、ハードが良くなる可能性もある。スタッフがどんどん育ってきて可能になることもある。それがすごく面白い。
――一般論として、監督は自分の作品のことだけ考えればいいと考えがちですが、むしろやりたいことやるためにはプロデュースワークも必要になるということですね。
もちろん監督がお金の配分までを気にかけろとは言うわけではありませんが、それでもそれくらいの意気込みでなければ、最終的には納得いくものは作れないのではないか。みんなが苦労してボロボロになりながら作品を作っても、スタッフが業界から去ってしまったら意味がない。次につなげるという意味では、そこは意識します。
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