『あの花』ヒットの緻密な仕掛けとは? アニプレックス・斎藤俊輔プロデューサーが語る制作秘話(下)

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かつて仲良しだった幼なじみの少年少女6人。しかし、ひとりの少女“めんま”(本間芽衣子)が事故で亡くなったことにより、彼らの距離はいつしか離れてしまっていた。そんなとある夏の日、奇跡は起こった。めんまが彼らの前にやってきたのだ。彼女のお願いをかなえるために、バラバラになっていた5人は、再び行動を共にするようになるが――。
2011年4月からフジテレビ系の深夜アニメ枠「ノイタミナ」内で放送されたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(通称:『あの花』)は、6人の思春期の少年少女たちが抱く恋心、友情、葛藤を真正面から描きだした物語。長井龍雪監督、脚本家の岡田麿里、作画監督の田中将賀という気鋭のクリエーターたちが繰り広げる、懐かしさとせつなさが同居した物語世界は、多くの視聴者の涙を誘い、『あの花』現象を巻き起こした。
そんな人気アニメが映画化され、『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』としてバルト9ほか全国で公開中だ。本作の世界観を構築するために行われた数々の制作の秘話、そして本作の興行戦略などについて、製作を手掛けた斎藤俊輔プロデューサーに聞いた。

印象に残すため長すぎるタイトルがいいなと思った

――『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』というタイトルがとても印象的ですが、これだけ長い題名にした理由は?

監督が思いついたことが基になっているのですが、プロデューサーサイドとしては長すぎるのがいいなと思いました。今でこそ、ライトノベルなどでも非常に長いタイトルの作品がたくさんありますが、あの当時はまだ少なかった。オリジナルアニメでいろいろな作品が出てくる中で、ちょっとでも印象に残るタイトルにしたいという思いはありました。確かにタイトルが長いことは覚えにくいことでもあるんですが、その覚えにくさすらも印象に残る。そういう意図はありましたね。

――ロゴのデザインビジュアルも純文学風で、テレビアニメのオープニングにこのロゴが登場すると、単なるラブコメではなく、文学的な物語のようにも感じさせます。

本作のプロモーションでは、ベイブリッジ・スタジオの黒木香さんというデザイナーさんと一緒にデザインを考えてきたのですが、そういう部分でのデザインは気にしました。販促物でも単にベタベタっとしたポスターにするのではなく、シンプルに、洗練された、ちょっとした書籍のような感じというか。そういったデザインをイメージしました。

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