――リサーチした結果が反映されたことなどはありましたか?
アヌシーの制作発表の時にパイロット版を見せたのですが、実はその時のハーロックは、若干怖い感じでした。呪われたキャラということで、恐ろしいまではいかないにせよ、結構きつめの顔ではありました。しかし、それを観たフランス人の女性の方が「ハーロックはもっとイケメンじゃないとダメ。フランス人女性にとってハーロックはもっと素敵な、恋人のような存在なんだから、あれじゃ怖い」と言われて、納得しました。それで戻ってすぐに本編用のキャラクターを若干イケメン気味に微調整して、作り直しました。
予算3倍の見せ方で世界と互角に
――今回の制作費は3000万ドル(約30億円)とのことですが。日本の映画としては大規模な作品になりました。
今まで僕がやった作品の規模から言えば、おそらく2倍以上の予算にはなっていると思います。ただし、ハリウッドで作られている作品となれば、120~150億円かけている作品は当たり前のようにある。そういう意味では、世界的なクラスの作品と比べると決して十分な予算とは言えない。とはいえ、いくら予算がある程度あると言っても上手に使わなければ、すぐに無駄に消えてしまう。そこは意識しました。
スタートする時に現場スタッフが「このくらいの予算があるので、その2倍くらいに見えるような作品にしなきゃだめですよね」と言ったので、「何を言ってるんだ、君は。3倍にしないと、世界とは戦えないよ」と彼らに返しました。でも本当にそうなんです。3倍にしてようやく100億近くになるわけで、それでやっと向こうの作品と遜色ないものになる。そこに肩を並べられるようなものにしたいという気持ちはありました。
――製作期間が5年だったそうですが、その規模だからというのも関係していたのでしょうか?
せっかくそういう意気込みで予算を出していただいているので、現場としてもそれだけ頑張らなければという思いはあった。もちろんただ頑張るだけではなく、ワークフローなどもうまく効率よく、無駄なく、ちゃんとした結果を出さなければいけない。どうしても闇雲に作ってしまった作品は、最後には破綻してしまう。企画当初の意気込みはすごいのに、だんだん尻すぼみになっていくという作品にはしたくなかった。今回は本制作に入るまでに時間をかけた。準備期間があったおかげで、出だしこそちょっともたついたものの、だんだんと尻上がりにクオリティーや作業スピードも上がっていった。そういう意味で、準備に費やした時間は無駄じゃなかったと思う。
――30億円規模の映画ではなく、100億規模の映画に見せるために画面を豊かに感じさせることだと思うのですが、具体的にどこを豊かにしようと心掛けたのでしょうか?
それにはいろいろな手があります。最初のシナリオには、もっといろんなシーンがあって、ボリュームがあった。それを一度シナリオの段階で、福井さんといろいろと話し合いながら、シーンを絞って相当シンプルにした。その後、それを絵コンテにして、現場に落とし込む際に、現場からはもっと要素を減らしてくれと要求されるわけです。とはいえ、それで向こうの言うとおりに(作業が)大変なところを切ってしまったら魅力がない作品になってしまう。だから、ただ力技で減らすのではなく、もう少し工夫のある減らし方にしようということは心がけました。
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