徐々に高まる1ドル=103円突破の可能性 円安進行を予感させる、インド株市場の底入れ
その中にはタイ、マレーシア、フィリピンのような経常黒字国も含まれる。もちろん、インド、インドネシアの経常赤字国の混迷に足を引っ張られたという側面もあろうが、中国の成長率鈍化が明確になるにつれて、アジア地域全体が減速懸念を強めたという一面もありそうだ。
アジア通貨下落の真相とは
もうひとつ、筆者が疑っているのが、昨年秋以降の円安の影響だ。と言うのは、1997年のアジア通貨危機を振り返ってみると、94年の米国の金融引き締めが95年以降の円安につながり、円高時には競争力が高まることが期待されたアジア諸国を取り巻く環境が一変したことが危機勃発の伏線となった。
今回もFRBの金融緩和巻き戻し観測が高まるに伴って円安が進行。その分、韓国や台湾など日本の競合国とみられる国の輸出競争力は悪化してきているはずだ。また、タイやインドネシアなど数多くの日系企業が進出し、日本との分業態勢が確立されている国でも、急激な円安進行で、日本企業がそれらの国への生産シフトをスローダウンしていくことになれば、直接投資の減少などがアジア諸国の国際収支を圧迫する懸念が出てくる。
長期的な観点に立てば、円安に伴って日本経済、日本製造業が復調すれば、最終的にはタイやインドネシアを筆頭にアジア諸国にとってもプラスに作用すると考えられる。
だが、そうした長期的な好影響が顕在化する前の段階では、日本企業がアジア諸国で事業を拡大するインセンティブが一時的に低下するなど、円安の副作用のほうが顕在化しやすくなるのかもしれない。今後、日本からアジア諸国への直接投資が長期的に減少するようなことにならないかを注意しておく必要がある。
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