徐々に高まる1ドル=103円突破の可能性 円安進行を予感させる、インド株市場の底入れ

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ようやくインド株の下落が止まった(同国で、撮影:高橋 由里 )

春から続いた新興国市場の下落だが、最終局面を迎えた公算が高そうだ。それを象徴するのが、インド株の反発だろう。SENSEX株価指数は8月末の安値から15%を超えて急騰しており、年初来高値を試さんとする勢いだ。経常赤字と景気減速に対する懸念から、インド市場は8月末まで通貨安、株安、それに債券安(金利上昇)が加わり、トリプル安の様相を呈してきたが、この2週間で雰囲気は一変。回復期待が膨らんできた。

後述するが、この大転換は、インドがその地政学的重要性を「現金化」できたことによってもたらされた。過去2カ月ほど世界的に見ても、最も激しい売り圧力にさらされていたインド市場の回復は、新興国市場全体の底入れを象徴する現象となろう。為替市場ではリスク選好の改善を伴うので、円売り再開の可能性が高まるだろう。

1ドル=103円を突破して円安に進む可能性

ドル/円相場は10~12月期に明確に100円を上離れて、来年1~3月期には今年5月につけた103円台の高値を突破して、ドル高円安が進む可能性が出てきたと見込んでいる。

まず、春以降の新興国市場の混乱だが、6月ごろまではブラジル、メキシコ、チリといった中南米諸国の通貨安、株安が顕著であった。その間、インドルピーや南アランド、さらには反政府デモの先鋭化を背景にトルコリラなども下落。そのときから経常赤字国通貨が下落する前兆が垣間見られた。

ただ、その頃、ブラジルに匹敵する株安、通貨安に見舞われたメキシコの経常赤字は、経済規模比で1%前後にすぎない。春の新興国市場の混乱は経常収支危機というよりも、主にはFRB(連邦準備制度理事会)の緩和巻き戻し観測が浮上したことが引き金になり、投資家のリスク選好が悪化。新興国市場におけるロングポジションの巻き戻しを誘発したと考えるのが自然だ。中南米市場で売り圧力が最も高まった理由だろう。

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