逆風の少年野球、競技人口減でも見えた希望

野球遊びの普及活動を元プロ選手がやる意義

その光景はほかのイベントと大差はなかったが、参加したのは子どもだけで、親は見学に回った。都市部と違って、高知県では親の世代は野球をよく知っている。子どもたちは実際に野球をするのは初めてでも、「野球はどんなものか」は知っている。野球への親和性には、地域による差があることを感じた。会場で、ある親は「あの監督さんは、子どもたちをよく怒鳴りつけるので有名だったが、今日はすごく優しく接している」と言った。

少年野球人口の減少は、すべてのチームで同じように進行しているわけではない。関係者によれば、スパルタで子どもたちをよくしかる指導者のいるクラブは、志望者の減り方が激しいという。旧態依然とした指導者は指導法の変更を余儀なくされる。あるいは指導者をやめざるをえなくなる。そういう形での淘汰も始まっている。

高知県小学生野球連盟理事長の高橋昭憲は話す。「今年の4月から、連盟の指導で小学校1、2年生を集めて、『野球遊び』のイベントをやるようになりました。大会に出場する上級生に、弟、妹や近所の子など1、2年生を連れておいで、と言ったんです。そしたらグローブも持っていない、運動靴の子どもが40人も来て、楽しく遊んで帰ってくれました。この中から何人が野球をやるかわからないけど、こうやって一つひとつ、つなげていくのが大事だと思います」。

高知県内の少年野球人口は2017年には1047人となっており、1000人以上でなんとか踏みとどまっている形だ。

前途多難だがやっただけのことはある

これまで野球界は「黙っていても子どもは野球をするものだ」と考えていた。数年前まで、裾野を拡大する努力はほとんどしてこなかった。それだけに「やったらやっただけの手応えはある」ようだ。

しかし、こうした取り組みは一過性では意味がない。サッカー界が20数年かけて、サッカーを小学生が一番好きなスポーツにしたように、地道に継続していくしかない。西武ライオンズの関係者も、その覚悟だと語っていた。

もう1つ気になるのは、プロ野球チーム、宮本慎也のような個人、そして高知県少年野球連盟のような地方の団体などで始まっている同じ目的を持った取り組みが、ほとんど連携していないことだ。ノウハウを共有したり、人事交流をしたりすることは今のところない。サッカーが「キッズリーダー」というライセンスを設けて、統一したやり方で子どもへの普及活動をしているのとは対照的だ。

縦割りで、団体ごとの独立心が強い野球ならではであるが、「野球離れ」という目の前の危機に対して、プロもアマも、地方も中央もないはずだ。「野球の明日への取り組み」を束ねて大きな力にする大同団結が必要だろう。

(文中一部敬称略)

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