カープの堅実経営を他球団が手本にするワケ 「12球団で最も貧乏」な歴史が結束を強める
その分、カープファンには球団創設以来、「自分たちがチームや選手を育てている」という意識が強い。松田元オーナーもこう言います。「どっかスポンサーつけてチーム作ればええ、という感覚だったら、絶対成立せんと思うよ。地域の人に愛されてこその球団じゃけえの」(2014年8月9日付デジタル毎日新聞より)。
2007年オフ、当時カープの主軸だった新井貴浩選手が、「つらいです……。カープが好きだから」と涙ながらにFA権を行使して阪神タイガースに移籍しました。2014年、30代後半になり、阪神での出場機会がめっきり減った新井選手はカープに復帰。その裏には、カープの鈴木清明球団本部長の「カープに戻ってこい」という言葉があったそうです。
通常、いったんチームを出た人間はファンからは「裏切り者」扱い。ところが、結果的にファンは暖かく新井選手を受け入れ、移籍前より彼の人気度は上がっているくらいです。
「人材を育てる」システムの徹底
カープは「人材を育てる」システムも徹底しています。現段階のレギュラー選手の年齢を念頭に置いたドラフト戦略で、「これは……」と思う選手はどこより早くスカウトマンがマークします。
そして、カープは「カープで活躍したい」という選手しか獲得しません。「相思相愛」で選手を入団させ、セカンドキャリアのサポートも手厚いのです。1990年、6億円の資金を投じてドミニカ共和国に日本初のベースボールアカデミーを創設。多くの子どもたちが野球を楽しみ、国技といわれるほど野球が浸透したこの地で育った選手がカープに送り込まれています。今シーズンでいうとバティスタ選手のような派手な活躍を見せています。
そんなカープですが実は1975年の初優勝以来、経営面では一度も赤字を出したことがありません。多くの球団が赤字を出している中、40年以上も黒字経営を続けているのです。
プロ野球の主な経費には職員の給与、選手の年俸、球場使用料、移動費や宿泊費などがあります。売り上げはホームでのチケット代やグッズ代などです。
黒字経営の理由として筆頭に挙げたいのが、「カープグッズ」の存在です。その売り上げは2016年で過去最高の53億円を記録、前年に比べ約17億円、4割超の増収で、球団の全売上高182億円の約3分の1を占めるまでになりました。
カープのほかにグッズ売り上げに強いプロ野球チームといえば、ヤクルトスワローズが挙げられますが、それでも2016年の売り上げは10億円とカープの5分の1以下です。
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