「五輪招致合戦」は途方もないムダである なぜ五輪主催者・IOCの権限が、ますます強くなるのか

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招致活動とは、超過利潤の奪い合い

招致活動は、経済学的にはレントシーキング活動である。レントとは超過利潤のことをいう。招致活動で勝てば、独占や制度的な理由で価格競争が制限され、妥当な利潤の水準を超えた超過利潤が生まれる。このレントを得るための活動が、レントシーキング(rent seeking)であり、誰もが利潤を美味しくいただきたいから、レントシーキング活動はレントの奪い合い活動となる。

レントシーキング活動は合理的であるが、無駄である。なぜなら、各経済主体にとっては、レントが1000億円あれば、そのレントが確実に手に入るならば、1000億円までなら喜んで出費する。レント獲得競争に勝つためだけに出費する。もちろん、完全合理性を仮定するならば、自分が勝つ確率も客観的に見ているから、期待値で考え、競争が3つの企業で行なわれ、獲得確率3分の1ならば、各都市は333億円までは出費して、勝負することになる。これは合理的だ。

しかし、経済全体では、3都市合計999億円の出費は無駄だ。999億円は経済に何の付加価値ももたらさない。消費されただけである。

一方、1000億円のレントはいずれにせよ、存在するわけだから、999億円の出費があってもなくても、経済には存在する。3都市を集めて抽選でレントの行く先(例えば、携帯電話用電波使用権の付与)を決めれば、それで済む。だから、999億円は浮くのであり、999億円は日本の、あるいは世界の貧困者に食料や薬を配ればよい。確実に世界全体では幸福度が増す。

したがって、オリンピックで言えば、マドリード、イスタンブールおよび東京の3つの候補都市が、財政および安全な施行などの最低限の基準を満たしているなら、順番に開催地とすればそれで十分だ。派手な招致合戦の費用は一切必要なく、世界に食料と薬を配ることができる。

それでは、なぜ、こんな無駄なことをしているのか。理由は二つある。

その理由の一つが、実は、先ほど述べずじまいだった「招致合戦が望ましくない理由」の第二なのであるが、開催地を決める側に権限があり、その権限の価値が高まるからである。これは典型的な「権限によるレント」だ。つまり、多くの都市がオリンピックを開催したい。そのため希望が殺到する。それならば、開催地という権利を高く売った方がいい。したがって、開催地争奪戦が激しくなればなるほど、開催地を決定できる側は強くなっていき、レントも大きくなっていくのである。

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