「五輪招致合戦」は途方もないムダである なぜ五輪主催者・IOCの権限が、ますます強くなるのか

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さらに、大きなメリットは国民が盛り上がるということである。あの派手な招致プロセス、開催地争奪戦があったことにより、国民はメディアの力もあって、精神的に大規模に動員された。こうなると、開催地をもぎ取った以上、4500億円もかける必要のない、オリンピックビジネスで儲ける奴らに出させるべきだ、という議論は出てこなくなる。だからこそIOCは国民の支持率を、開催地決定の重要な要素としているのだ。

したがって、IOCとしても、ビジネスとしてオリンピックを捉えている関係者も、派手な招致合戦という無駄を削らずに、むしろ盛り上げることによって、大会の成功、財務的にもイベントとしても成功することの保証を得るのである。だから、招致合戦は年々派手になっていくのである。

さて、こうなるとトータルで見て、無駄は残ったままか、どうなのか。

基本的には、無駄である。しかし、人間の幸福度の合計を国民全体、世界全体で行なうとどうなるのか。あの招致合戦に興奮して、東京決定により感動した人々は大きな幸福を得たのであるから、物理的、金銭的無駄を補うだけの幸福度の増加があった可能性がある。

したがって、このイベントを無駄にしないためには、私のようにシニカルに眺めるのではなく、合理性を捨て去って、何も考えずにお祭り騒ぎに参加する方が、日本全体、世界全体の幸福の増大に資するのである。

さらに言えば、この興奮度は、成熟国よりも新興国、後進国で高いと思われるので、開催したことがない地域や国の方がIOCとしても望ましいのであり、複数回開催するのであれば、あまり合理的でなく、無邪気に喜ぶことができる国で開催することが望ましい。これが行動経済学的に見た場合の、一つの結論である。
 

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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