ライアンエアーからパイロットが逃げている

6週で2100便を取り消し、LCCの雄が大迷走

ところが、混乱の元凶は「休暇の取得ではない」という声も聞こえてきた。ライアンエアーの本社はアイルランドに置かれているが、同国のパイロット労組であるアイルランド航空操縦士協会(IALPA)は地元メディアに対し、「今年になってライアンのパイロット140人余りが、競合のLCC・ノルウェージアンに転籍した」と公表した。実はライアンの勤務条件の悪さを憂い、他社に逃げたというのが真相とも伝えられる。

英紙インディペンデントの旅行関係ジャーナリスト、サイモン・カルダー氏は9月18日付のデジタル版で「ライアンのパイロット、最大500人が他社へ移籍も」とも記しており、混乱はまだまだ続きそうだ。

なりふり構わず特売チケットを乱発

普段は「床が見えないほど」に混み合うチェックインエリアに旅客の姿は見えず(ロンドン・スタンステッド空港で、筆者撮影)

新聞各紙やテレビニュースでライアンエアーの混乱が伝えられる中、客足は徐々に遠のいているようだ。筆者が9月24日に同社最大のハブ(運航拠点)であるロンドン郊外のスタンステッド空港を訪れたところ、運航便はたくさんあるのにチェックインカウンターのエリアは閑散としていた。

LCCの場合、事前に搭乗券を用意しておけばカウンターに立ち寄らずゲートに直行できるので、搭乗手続きをしない(荷物を預けない)利用客の割合が多いことは理解できるものの、あまりの旅客の少なさに正直驚いた。近くにいた係員に「今日はずいぶん少ないですね?」と尋ねたところ、「夏のピークも終わったので、静かなものですよ」と答えながらも表情はつらそうだった。

特売チケットを矢継ぎ早に打ち出すライアンエアーのウェブサイト

旅客減少の厳しさはどうも深刻な状況にあるようだ。同社は2014年12月以来維持している「9割台の搭乗率」を死守するため、極端な特売チケットを販売し始めた。普段は最も安くて19.99ポンド(約3000円、税金諸経費込み)だが、2000便余りのキャンセルを打ち出した直後から多くの路線で片道9.99ポンドで提供、区間によってはそれ以下の最低4.99ポンドまで下げている。

英国では飛行機での出発に対し「航空旅客税」を課しているが、欧州線の税額は旅客が支払う最低運賃を上回る13ポンドだ。前述のジャーナリスト、カルダー氏は「ライアンエアーは、税金との差額をも払って旅客の取り込みを進めている」との見方を示している。そこまでして空席を埋めようとする企業努力には頭が下がるが、多くの便でキャンセルを重ね、旅客の信頼を失ったことは疑いない。はたして、乱発ともいえる特売チケットの販売が搭乗率の回復に奏功するだろうか。

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