本屋は苦しい、だけど街の本屋を始めるワケ アマゾン全盛時代の「本屋」の生き方<前編>
成毛: さて、そもそも3人の関係は?という質問をいただいてます。
嶋:成毛さんとの出会いは、編集工学研究所の松岡正剛さんに紹介してもらったのが初めです。楽屋で「マルチタスカーはすごい!」だなんて言ってましたね。
成毛:水代さんと嶋さんの関係は?
水代:今日が初めてです。成毛さんは硬派ジャーナリストの磯山友幸さんに紹介していただきました。日本経済新聞のチューリッヒやフランクフルトの支局長をされていた方で、僕が独立したと言ったら「ご褒美に偉い人に会わせてあげるよ」ということで、成毛さんの事務所に連れて行ってもらったのが最初です。
成毛:そうでしたか。話が戻るんですが、本屋の経営というのはどのように大変なのか。思いを語ってもらいましょう。本屋の先輩である嶋さんから。
嶋:SPBS(SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS)という本屋を10年やっている福井盛太さんと、うちの周年イベントでお話ししました。彼曰(いわ)く「本屋の仕事のほとんど大半が地道な努力だと」。まさにその通りだと思います。ガウディの建築のようなものです。毎日、暫定1位の本棚を作る。いい本屋はどんどん本が売れて棚が空く。次の日には店にある在庫でいちばんいい状況の棚を作り直す。毎日この並びがいちばんいいなと暫定1位を作る作業の繰り返しです。植木の面倒を見るようなものですね。
本屋は元祖セレクトショップだ
成毛:今は、どこの書店も取次からパターン配本を受けて販売するのが多いですよね。
嶋:築地の市場で魚屋さんは魚を仕入れて、そこからは魚屋さんの責任です。本は委託販売制度というものがあります。出版社があって、取次という卸が真ん中にあって、書店がある。売れなかった本は、取次経由で戻せます。出版社は戻ってきた本をまた別に回したりする。そのシステムだと取次は「売れないものは送りたくない」と思うようになる。ですからデータを見て売れ筋の本だけを全国に送ることになり、同じベストセラーが並ぶような金太郎あめ書店が増えるのです。B&Bは取次にプレゼンをして、パターン配本を断って、1冊ごとに対応してもらっています。
本屋というのは元祖セレクトショップであって、どこで買っても『BRUTUS』は一緒ですが、見せ方がそれぞれ違うのがいいところだと思っています。