本屋は苦しい、だけど街の本屋を始めるワケ アマゾン全盛時代の「本屋」の生き方<前編>

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成毛:補足すると、取次不要論というものがあります。大手(書店)にはベストセラーがずらっと並んで、どこの本屋も同じじゃないかと。本は年間8万点、1日に270冊出ていますから、新刊すべて見通すのは不可能に近い。書店数が減ったとはいえ1万4000軒です。出版社は3500社ある。それだけの組み合わせをどうするか? 現実に8万点の書籍をわかっている人はほとんどいませんから、コンピュータを使ってパターン配本にならざるをえません。水代さんのところもパターン配本ではないですよね。

水代:今回は1冊ずつ自分で選んでます。最初なんで、ジャンルも切り口も編集もせずに自分が読みたい本、好きな本だけ並べたらどうなるかなというところから始めました。変えていきたいとは思っていますが。

3つの扉がきれいな店ははやる

成毛:イベントはやるんですか?

会場には「本好き」がたくさん集まった(編集部撮影)

水代:はい。Hama-Houseさんという、店名と同姓同名のイラストレーターの方の個展をやります。そのほかにもイベントを連続的に行っていきます。

カフェ自体は本職で20年くらいやっていますが、昔は勝ったり負けたりの繰り返しでした。

あるとき、負けパターンは2つしかないと気づきました。メンテナンスとコミュニケーションの問題です。簡単にいうと、お店の3つの扉、つまり冷蔵庫・入り口・トイレがめちゃくちゃきれいで、早番遅番、キッチン、ホール、ギャルソンがみんな同じ方向を向いていることが大事です。この状態が続いていれば負けはないという実感があります。

僕も多いときには年間140本くらいの体験型のイベントをやりましたが、いちばん必要なのはハプニング。自分が想像しない角度からの出会いだと。そのときに、おカネがいらなくて、遊びに来る方法はないかなと? カフェだとコーヒーを頼まないでいたら感じ悪いですが、本屋ならばそうではない。ゆっくりごろごろできるので、より面白い出会いが起こるのではないかという仮説に基づいて本屋を立ち上げました。

(構成:高杉公秀)

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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