EC企業が駆け込む宅配受託サービスの底力 「アナログ業界」にITの新風を吹き込めるか
CBクラウドを利用すれば、配送効率を高められる。たとえば、ドライバーが複数の荷物のバーコードを読み込むと、効率的な道順がスマホの地図上に表示される。受け取りサインも電子化した。配送効率が高まればコスト削減につながる。
また宅配を担う従来の物流会社は荷主の荷物量に応じて柔軟に車両の台数を変更することが難しかった。結果として荷主は荷物がない時に車両を遊ばせることになり、物流コストがかさむ要因になっていた。CBクラウドが提供する宅配受託サービスを使えば、必要な時間帯に必要なだけ車両を使うので、無駄なコストを省きつつ、配車できないリスクも解決できる。同社によると、全体の物流コストが2~3割削減できるケースもあるという。
ドライバーにとって最大のメリットは待遇が重視された報酬制度にある。ヤマト運輸や佐川急便など宅配大手は宅配便の配達を自社のドライバーだけでは賄いきれず、外部の物流企業に委託している。末端の事業者は配達を完了してはじめて手数料を受け取るが、「1個当たり130~150円程度」(業界関係者)と言われるように、非常に低い。仮に1日100個配達しても収入は2万円に満たず、ガソリン代や維持費を払うことを考えると、利益はほとんど出ない。
そこで、CBクラウドは宅配受託を始めるにあたり、ドライバーが受け取る手数料を「配達個数ベース」ではなく「時間ベース」とした。これは荷主と時間単位のチャーター制で契約する仕組みだ。仮に不在配達となっても、そのリスクは荷主が負い、ドライバーには働いた時間分の料金が支払われる。CBクラウドは荷主から受け取る手数料を10%に抑え、ドライバーが受け取る報酬として、時給換算で2000円を目指している。
宅配受託のドライバーは、マッチングサービスのピックゴーに登録したドライバーの中で公募して決める。荷主からの要望があれば面接も実施する。現在、50~60人のドライバーが稼働中だ。3社の宅配受託を担う三村直人ドライバー(33歳)は「不在配達の不安がなくなった。宅配便の仕事の下請けをしていた時と比べて収入が安定した」と話す。
3分以内にドライバーから応答が届く
ピックゴーも宅配受託と同様に、ドライバーの待遇や配送効率を重視したサービスだ。
ピックゴーで配送が成立した場合、CBクラウドが荷主から受け取る手数料も10%だ。サービスに登録できるのは軽貨物運送事業者の個人ドライバーだけで、物流業者の登録は認めていない。マッチングのスピードが遅くなることや、余計な中間マージンが発生しドライバーの待遇改善に直結しないとの考えがあるからだ。ドライバーの中には、ピックゴーで仕事を直接受けることで、2割ほど報酬が増えた例もあるという。
一方、荷主にとってのメリットはやはり業務の効率化だ。依頼する荷物は建設用の管材、リフォーム資材、印刷物などさまざまだが、鮮度が命の食品もある。即座に荷物を運んでほしいという「緊急配送」のニーズも高く、配送業者を見つける時間は極力減らしたい。
ピックゴーの場合、荷物の種類や量、配送先や配送日時をウェブサイトに入力すると料金が自動で計算されるため、見積もりの手間がない。依頼が登録されると、1800人ものドライバーのスマホのアプリに仕事内容が通知される。そこで、仕事を受けたいドライバーがエントリーし、荷主がドライバーを決める仕組みだ。大半のケースでは依頼から3分以内にドライバーから応答が届く。荷主はドライバーのコメントやほかの荷主の評価を見てドライバーを選ぶ。
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