EC企業が駆け込む宅配受託サービスの底力 「アナログ業界」にITの新風を吹き込めるか

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ピックゴーのマッチングのデモ画面。荷主はエントリーしてきたドライバーの評価やコメントを見て、ドライバーを選ぶ(撮影:梅谷秀司)

ピックゴーによる配送マッチングや宅配受託を使えば、荷主はコストを抑制でき、ドライバーは手取りを増やせる。CBクラウドは手数料を受け取る。まさに「3方よし」のサービスだが、課題はないのか。

一つはドライバーの質の担保だ。ピックゴーは、軽貨物自動車運送事業の免許があれば誰でも登録可能で、現在、毎月200人ずつ増えている。会社設立時の事業計画書では2019年までに1万人の登録を目指しているが「前倒しになる可能性もある」と松本CEOは話す。最近では新しくドライバーを始めたいという、独立希望者からの相談も増えている。

ただし、物流業界の経験がない人まで登録するようになれば、定時での配達や荷物の取り扱い、顧客への対応などで配送品質が落ちるリスクがある。そこで、CBクラウドはドライバー向けの研修体制を準備中だ。

ドライバーの理解を確認しながら研修を進められるeラーニング(インターネット学習システム)が候補になる。より慎重な取り扱いが求められるような荷物を運ぶ時には、eラーニングで一定の点数を取らないと運べないようにすることも検討する。また、ドライバーの経験が浅い人には、ほかのドライバーが運転する車に同乗するプログラムも用意する方針だ。

仕事の幅を広げ、魅力を高められるか

もう一つはドライバーの仕事の魅力をどう高めるかだ。今は働き方の自由度や報酬体系が魅力となり、既存のドライバーを惹きつけている。しかし、運ぶ荷物は既存の宅配会社や運送会社が取り扱うものと大差はない。仕事量が増える一方、仕事の本質的な魅力を高めない限り、ピックゴーに魅力を感じてせっかくドライバーになった人も定着しない。

松本隆一(まつもと りゅういち)/CBクラウドCEO。1988年沖縄県生まれ。高校卒業後、航空保安大学校を経て国土交通省に入省。2013年に退省し、同年CBクラウドを設立。社名のCBクラウドには「積乱雲」の意味があり、積乱雲のように急速に成長したいという目標とクラウドサービスをかけあわせた(撮影:梅谷秀司)

そこで、CBクラウドは今年8月からピックゴーを個人向けにも展開し始めた。個人が配送日時や行き先を指定してドライバーを募り、価格も交渉する。従来は個人が自由に依頼できる配送手段は限られ、価格も硬直的だったところに商機を見出したのだ。

新サービスでは、単身の引越しやフリマアプリのメルカリなどの市場拡大で増えている、家具の配送などの需要も取り込む。さらには家具の組み立てやパソコンの設定などの業務も追加できるようにする。松本CEOは「仕事の幅を広げることで、ドライバーのやりがいを高めていく」と話す。

ITを活用し、従来と異なるモデルで急成長するCBクラウド。アナログの仕組みが蔓延し、課題山積の物流業界に新風を吹き込めるか。ドライバーと荷主の双方にとって魅力あるサービスを磨き続けることが、成功のカギになりそうだ。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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