プロが伝授!「速く走る方法は2つしかない」 走りのエキスパートが夢の「かけっこ」対談
秋本:なるほど。僕の現役時代もそうですし、今、子どもやプロを指導するうえで意識していることでもあるんですけど、技術に頼りすぎちゃうとダメなんですよね。
僕は国際武道大学の大学院時代に日本選手権のファイナリストになり、200メートルハードルでは日本最高記録を出しました。それで実業団に入った時に、ちょっと背伸びして技術にばかり傾倒して泥臭い練習をやらなくなったんです。でも途中で、走った後に倒れ込むぐらいの練習量という土台があってこその技術だと気づきました。福田さんの土台は、1、2年目の厳しいトレーニングで築かれたんですね。
32回連続で盗塁に成功できた理由
福田:たくさんの本数を走るなかで、「どういうフォームだといかに速く、楽に走れるか」をつねに考えていましたね。この走り方でこのタイムなら、もうちょっと違う走り方にしてみようとか、こっちのほうが楽だけど速いとか、自分なりに考えて試行錯誤していました。
秋本:福田さんのスピードの原点がわかりました。僕はよく為末(大)さんと一緒に練習していたのですが、ずっと言われていたのは「最後は頭の勝負だ」ということです。才能に頼ってきた人は、ケガをしてバランスが狂うと修正できなくなることが多い。自分で考える習慣がある人は、不調の原因を自分で見つけて修正できる。福田さんの「考える力」は盗塁する時に発揮されているはずです。
福田:僕は、一塁からスタートを切って二塁に到達するまでにだいたい3.1秒かかります。一方で、盗塁を察したピッチャーがストレートをアウトコースに投げて、キャッチャーが投げた球が二塁に届くのは3.0秒ぐらい。この0.1秒が勝負になります。盗塁は成功率がとても重要で、50回スタートを切って30回成功するのではなく、35回スタートを切って30回成功するぐらいの成功率を目指しているので、若い頃は本多(雄一)さんと川﨑(宗則)さんが盗塁するところをひたすら見て、走るタイミングを覚えました。
秋本:たとえばどんなタイミングですか。
福田:自分が一塁にいる時にキャッチャーの動きを見てアウトコースに構えたら、ストレートを横に外して、僕と勝負してくるんだろうなとわかります。逆にキャッチャーがど真ん中に構えたら、ど真ん中にストレートを投げることはないので、フォークとか落ちる系の球を投げると予想して走るか、走らないかを決めます。投手が変化球を投げるタイミングが自分にとって盗塁のチャンスなので、つねにピッチャーとキャッチャーの動きを予測して、隙を見つけるようにしています。相手ピッチャーの癖、配球も研究していました。対戦したことがないピッチャーが出てきた時は、ベンチの端で観察するようにしています。
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