中国版ツイッター、ウェイボーの危機 中国で動き出す「ウェブ整風運動」

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ユーザーに恐怖を与えて取り締まる

また、各地の大学には今春、「七不講(7つの語るべからず)」の指示が下ったと言われている。

その7つとは、「(人権などの)普遍的価値」「司法の独立」「公民社会」「公民権利」「報道の自由」「党の歴史的な過ち」「権貴資産階級(党の権力者たちのお金持ちぶり)」の7項目の内容を授業で取り上げてはならないというものだ。いずれも微博でホットな話題となったもので、正義感の強い若者たちが最も関心のあるテーマである。微博への「攻撃」プログラムはすでにしっかりと組まれているようだ。

微博は中国で驚異的な発展を遂げた。ユーザーが3億人を超え、従来は党・政府系の官製メディアから一方的に流される情報を受け取るだけだった中国人の情報環境に、「自ら発信する」という革命的な変化を及ぼした。中国において従来、意見を発表するには新聞、雑誌、テレビなどメディアを通じて行うことしかできなかった。これらの伝統的なメディアはすべて何らかの形で党と政府の管理下に置かれているので、問題発言を最初から排除してしまえば情報封鎖は完了するが、微博ではどうしても当局の対応が後手に回っている間に情報が拡散してしまい、民衆側の優勢が保たれてきたのである。

無数のユーザーのスピーディな転載をいかに食い止めるか。その対策として浮上したのが「デマ情報」に対する厳罰化を含めた規制の強化なのである。

先月、中国に滞在していると中央電視台(CCTV)がこのデマ情報についての特番を組んでいた。どこかの交通事故について、「大勢が死んでいるのに救急車も来てない」などのデマを流した若者を警察が逮捕し、その本人にCCTVの記者がインタビューして、「当時は深く何も考えないで、どこかで聞いたうわさを書き込んでしまった。みんなに迷惑をかけ、国家に迷惑をかけ、申し訳ない」というコメントを放送していた。アナウンサーが番組内で繰り返し強調したのは、「微博も公共的な空間であり、そこでニセ情報を流すことには大きな代償を払わなければならないのです」ということだった。

もちろんウェブでニセ情報を流すことは正しくない。それが個人攻撃、名誉毀損、脅迫などにあたる場合は、犯罪を構成する要件になることも世界共通である。しかし、呉虹飛の場合も、CCTVが取り上げた問題も、どちらかというと特に害意のない、個人の不満の発露やうわさ話のレベルである。これで逮捕されてしまうならば、不正確な話やちょっとした批判をしただけで当局の裁量でいくらでも逮捕されるということだ。つまり微博のユーザーに恐怖を与えて取り締まろうということである。

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