スタンガンは「安全な制圧方法」とはいえない 警察が使用したケースで全米1005件の死亡例
このタイプのスタンガンは2000年代初め以降、火器の代替品としてほぼ全米で導入されており、「安全」な制圧手段の主流となると見込まれているからだ。全米の約1万8000の警察機関の約9割に、テーザー銃が導入されている。
ワイヤーで接続された2本の針を人体に向けて発射すると、電流が流れて神経と筋肉がマヒした状態になり、その間に警官が取り押さえることができる。体に直接押し当てて使うこともできるが、その場合は強い痛みがあるのみで、電流が流れる針は発射されない。
テーザー銃の製造会社は、このスタンガンがこれまでに現場で300万回以上で使用されたと推計している。同社では、自社製品の使用を巡る死亡事故の記録を取っているが、公表はしていない。
「どのような武器にもリスクがある」
ロイターの調査で判明した1005件の死亡事例は、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが2016年末に公表した報告書よりも厳格な基準を使ったにもかかわらず、同報告書に記載された事例700件を44%上回っている。
ロイターの調査結果に対し、テーザー・インターナショナルのスティーブ・タットル広報担当副社長は、どのような武器にもリスクがあるとした上で、テーザー銃は「警察当局にとって、最も安全な武器の選択肢」と断言した。
タットル副社長は、ロイターが入手した検死報告書は、査読を経ていないため信用性が低いと主張。また、担当した検死官や病理学者が、漏れを避けるために、必要以上の死因を記載した可能性もあると指摘した。
1990年代にスタンガンの技術を開発したテーザー・インターナショナルは、4月に社名をアクソン・エンタープライズに変更した。業務内容が、警察用の携帯動画カメラやソフトウェアの開発まで広がったことを受けた社名変更だという。