スタンガンは「安全な制圧方法」とはいえない

警察が使用したケースで全米1005件の死亡例

死亡者の多くは、社会的弱者だ。4人に1人が、トムさんのように精神症状による錯乱状態にあったり、精神疾患を抱えていた。全体の9割が武器を所持していなかった。また、100件以上が、救急医療を求める911番通報から始まったものだった。

ロイターの調査で判明した死亡事故の多くでは、テーザー銃の使用状況を詳細に把握することは不可能だった。たが、裁判資料で比較的詳細な経緯が分かる400件超を分析したところ、4件に1件について、警察が使ったとされるのはテーザー銃のみだった。その他では、同スタンガン以外の強制力が行使されていた。

「安全」な制圧方法といえるのか

警察のテーザー銃使用による死亡例について、政府は統計を取っていない。公的な検死解剖が行われない州もある。また、検死官や医療検査官は、死因とスタンガンの影響を評価するのに様々な基準を使う。その結論も、詳細で厳密なものから、薄く不透明なものまで、表現に幅がある。

テーザー銃の製造元は長年、こうした死亡事故について、同社製品が原因ではなく、薬物使用や心臓の既往症、警察による他の武器使用などが原因だと主張してきた。

同社は、テーザー銃使用が原因となった死者は24人にとどまっているとしている。18人が、テーザー銃で撃たれて転倒し、首や頭を強打。6人が、銃の火花による出火が原因だという。テーザー銃による心臓や体への強力なショックが直接の原因となって死んだ人は、1人もいないと主張している。

だが、公的記録はそれとは異なる実態を示している。

ロイターは、1005件の死亡事故のうち、712件の検死記録を入手した。その5分の1以上にあたる153件で、テーザー銃が死因、もしくは死亡原因の1つだと記載されていた。その他の死亡例では、心臓や他の疾患、薬物使用など、さまざまな外傷が死因だとされていた。

折しも、警察官による殺害事件に対する抗議が相次いでいることを受けて、全米でより「安全」な制圧方法の導入が検討されている。テーザー銃による多数の死亡事故の存在が明らかになったことで、米国の警察当局は新たな問題に直面することになりそうだ。

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